• 17 / 19 ページ
 案外おいしかったキノコ足を堪能した次の日の朝、目が覚めるとマチューがいた。

「近いわ!」

 いくら塩顔イケメンとは言え、寝起きから十センチの距離で見つめられていたら引く。

 前回同様頭突きをかましたが、今回も痛かったのは俺の頭部のみのようだった。

「あらおはよう、タナカ」
「おはようはいいけど、もっと離れてくれ」

「無理に起こすのもよくないと思ったから、自然に起きるように近づいていたのよ」

 どんな理屈だよ。

 隣を見ると昨日いた場所にニアはいなかった。

 どうやら俺よりも先に起きて、キノコを集めていた場所で作業をしているようだ。

「で、なんでマチューいるの?」
「助っ人よ。あなたたちだけだとあのキノコたち運ぶのにどれだけ時間がかかることか」
「要は肉体労働要員か」
「そういうこと」

「どうやって持って帰るんだ?さすがに一体ずつ手で持つわけじゃないだろ」
「ちょうどアポロニアが作業していると思うわ。私が持ってきたかごに入れて持って帰るのよ」

 ニアのところに行くと、件のかご五つにぎっしりとキノコが詰め込まれていた。
 一体一体動かなければ大した重量ではないが、さすがにこの数は重そうだ。

「おはようタナカ。これタナカのー」

 歩み寄ってきたニアにかごの一つを渡される。両手で受け取ったが、危うく転びそうになった。

「おはようはいいけど重いな」
「タナカはしょぼいねー」

 ニアは自らかごの一つを背負う。その体躯のどこにそんな力が備わっているのか不思議でならない。
 マチューはかごを背負い、なおかつ両手にかごを持っていた。

 馬鹿力過ぎる。さすが姉御、心の中で何となく合掌。

「さて、街に戻るわよ」






「なあ、来た時と微妙に道が違うのはなんでだ?」

 一時間ほど歩いたところで、どうやら最短距離で町に戻っているのではないことに気づく。

「どうやらバッタが暴れまわっているらしくてね、そのエリアをよけているのよ。といっても奴らのほうが素早いから遭遇する可能性はあるでしょうけど」

 すぐ前を歩くマチューが答えてくれる。
 今は先頭にニア、真ん中にマチュー、最後尾が俺だ。

「バッタって自警団の人たちが何とかするんじゃなかったのか」
「予想以上に数が多くてね。自警団じゃ数が足りなかったみたいね」

「その、バッタってやっぱり危ないのか?」
「大丈夫よタナカなら。基本的には二足歩行でただ殴ってくる虫だからね。あなたの不死力ならまず負けることはないでしょ」

「自警団の人たちに被害とか出てないよな?」

 バッタ被害が想像以上と聞いて、ミッキーやエバの安否が気になった。

「彼らもプロだから大丈夫よ。今のところ被害の報告はないわ」
「そっか、よかった」



 ふと、木の陰で何かが動いたような気がして足を止める。

「マチュー、今なんか動かなかったか?」
「私は気づかなかったけど、ここまでバッタが来てるのかしら」

「ニアはわからねえのか?索敵できない?」
「バッタとかはマナを持ってる魔獣じゃないからわからない。ごめんね」
「あんまり気にすることないわよ。さあ進みましょ」

 気になるが再び俺は歩き出した。
 しかし数分もしないうちに再び期の陰にたたずむ何かが視界に映る。

 やっぱりいる。
 けどマチューたちは気づいていないようだった。

 進むマチューたちに声はかけず、再び足を止め木陰を注視する。

 すると白いものがふわりとたなびく。

「布……?」

 白い布、そう認識すると、突然あのくそじじいの顔が浮かんだ。

「あいつ神様だろーが。なんでこんなとこいんだよ」

 町のほうへは行かず、白い布がたなびいた木陰へと向かう。木陰には何もなく、見渡した先に再び白い布がたなびく。

「どういうつもりだよ」

 からかわれているようでイラつきながら、次の布の場所へ。

「タナカ……?」

 突然目的の方向とは違う場所へ向かいだした俺へ向け、心配そうにニアがつぶやいたが、俺の耳には届かなかった。

 次へ次へと布を追いかけて森の中へ。

 広い場所に出た後、白い布はどこにも見えなくなった。

「ほんとに何がしたかったんだよ」

 状況に納得できず頭を抱える。

 背中にかかるかごの重さがふいに、街に戻らなくてはと正気に戻した。

 来た道を戻ってニアたちに合流しないと。勝手に駆け出して怒ってるだろうし心配かけてしまっただろうと想像し、申し訳なさがこみあげてくる。

 しかし振り返った俺が見たのは、身の丈2メートル越えの二足歩行昆虫の姿だった。  

更新日:2018-04-16 00:24:34

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

異世界に行かせてもらえるというからやる気だしたのに