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 バッタ退治は丁重に辞退させていただいた。

 考えても見てほしい、人間大の二足歩行型バッタさんを大量に討伐って、戦闘力皆無の俺には無理だろう。そもそも虫あんまり好きじゃないし。

 というわけで、ミッキーも出ていったギルド内、今度はひとりになってしまった。

 本来はアデルに用があってきたのだが、アデルは今奥にいる。文句を言いに来たわけだが、ミッキーやエバのせいで気勢がそがれた。

 特に急ぐこともないわけだし、アデルを待ちつつクエストでも見ようか。そう思って席を立ったところ、


「タナカだー、久しぶりだねー」

 ニアが現れた!

「久しぶりっつっても一週間だけどな。ともあれよっす!」

 軽く手を挙げ俺も答える。

 相変わらず金髪獣耳に獣尻尾の超絶美少女、ヒロインの登場に心湧きたつ。

 と同時に、ちょっと不満も思い出す。

「ところでニアよ、お前さん気づいてただろ、アデルが野菜の面倒を見るクエスト俺に押し付けるの。あれ結構めんどくさくて疲れたんだぞ!」

「まあまあ、それで稼げたんだからいいじゃないのー」

「俺の苦労をまあまあで片付けるなよな」

 ニアの朗らかな笑顔を見ると留飲も下がろうってもんだ。

「騒がしいと思ったら我が愚妹じゃないか。タナカも一緒か」

 いつの間にかアデルも出てきていた。

 いいつつカウンターのわきにある棚から、干し肉を取り出し咥え、そのままジョッキへと手を伸ばしていた。

「また飲むのかよ。まあそれはそれでいい。とりあえず報酬くれよ、野菜の面倒見てきたからさ」

「ああ、報告に来たのか。これが報酬だ」

 そういって大小に分かれた袋を渡される。

 小さい方の袋の中には銅貨が10枚束ねられて入っていた。この世界でみる初めての通貨だ。

 大きい袋の方には、俺が面倒を見ていたニンジンとキャベツ、大根がそれぞれ二本または二玉入っていた。

「こんなもんなのか」

 貨幣の価値がわからない俺は、とりあえず受け取った報酬をありがたく頂戴する。

 畑では元気だった野菜たちも、いまはおとなしい。抜かれると死んでしまうとかそんな感じなのだろうか。それとも今は眠っているだけで、ちゅうりの段になって暴れだすのだろうか。

「ちなみに銅貨一枚ってどれくらいの価値なんだ?」

「ウサギ一匹分」
「ジョッキ2杯分ってところだな」

 価値を問うと、アデルとニアがたとえてくれた。

 うん、両方ピンとこない。

「貨幣の価値は安定してないからな。基本的には街ごとに均衡はとれているだろうが、あまり当てにしすぎるなよ」

「人によっても変わるからねー。嫌なら物々交換とかも有効だよー」

 それぞれ補足してくれる。

 つまり、この世界の経済は敷設途上であり、徹底はされていないということだろうか。
 物々交換の時代から、貨幣経済への移行中と考えるとわかりやすいな。

「銅貨ってことは、銀貨や金貨もあるのか?」

「銅貨が100枚で銀貨1枚だ」
「銀貨100枚で金貨1枚だよー」

 まあ大体はわかった。銀や金の配合とかごまかして、貨幣を個人で鋳造する輩が現れそうな気がしてならないが、発展途上ならそんなもんだろう。

 結論、

「自活できるならそうした方が楽だってことだな」



「ところでタナカ、この後火急の用があったりはしないか?宿なしの上に少し前まで無一文だった君に何か用があるとも思えないが」

「後半の注釈いらなくないか!?」

 報酬をどう使おうか思案していると、アデルからの嫌味な質問が飛んでくる。どうせ無一文の宿なしだよ。

「なんもないよ。しいて言うなら住むとこ探しとかくらいだな」

「我が愚妹も火急の用もないことだし、一つクエストを頼まれてはくれないか?」

「あたし何も言ってないんだけど―」

「今度も簡単なものだ。正直誰でもできるが、生憎近くにいる労働力はキミたちだけなのでね、頼まれてくれるとありがたいが」

「妹の話はスルーかよ。先に内容聞いてもいいか?また野菜の面倒みたいなやつは勘弁だぜ」

「問題ない。戦闘も発生しない類のクエストだ。森の奥に行くので多少獣と遭遇する可能性はあるが、愚妹程度であしらえるだろう」

「具体的には?」

「森の奥で発生しすぎたキノコを討伐してきてほしい」

「キノコを、討伐?」

 イメージするキノコといえば地面に生えている菌類だ。それを討伐と表現し、戦闘の発生しないクエストってなんだ。

「サイズは大きいが逃げ回ることしかできず、戦闘力もないキノコだ。それらが大量発生したため、養分となるマナが吸い尽くされ周囲の森が枯れる危険がある。速やかな対処が望まれる害獣だ」

「わかったよ。そんなやつらならだろうにかできるだろう」

「ありがとう。頼むよ」

「結局あたしも行くのか―」


 腑に落ちない顔をしたニアに引きつられて、おれは森へと向かった。

更新日:2018-03-08 14:05:31

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異世界に行かせてもらえるというからやる気だしたのに