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会員証
「うう、頭が痛い。なんだこれ、二日酔いか?なんでこれは不死力とやらで治らねえんだよぉ」
昨晩調子に乗って飲みすぎたからだろう、ひどく頭が痛い。視界もぐわんぐわんするし、これが二日酔いなら最悪だ。二度と酒なんか飲むもんか。
「不死力って言っても万能じゃないみたいね。外傷の治癒にだけ特化してるとかなのかしらね」
「あたしも頭痛い―。飲んでないのに―」
調子に乗った俺と、体質的に調子に乗れないニア。二人仲良く頭を押さえながら、街の門をくぐった。
とりあえずはギルドへ行って、アデルに報告だ。
ばかみたいに頭が痛いが、なにはともあれ、俺のはじめてのお使いはこれで終了だろう。
頭が痛い―、といいながらマチューにおぶられて運ばれるニアを見て、ちょっとうらやましい。
どっちがって?
どっちもだ。
足取り重く、とぼとぼと時間をかけてようやくギルドにたどり着く。
「アデルー!帰ったわよ」
扉を開け声を掛けると、カウンター奥からギルドマスター、アデルが出てきた。
暇だったのか、昼間っから酒を飲んでいるようだ。
現世のもので例えるなら、この世界の酒はエールだ。ビールのように泡があるわけでもなく、苦くない。
まあ現世でたくさん飲んだことがあるわけではないので、酒の味は正直分らないのだけどな。
ビールと違い苦みもなく、安物のワインのような酸味もない。むしろ香ばしさと甘さが感じられて、俺は結構好きだ。
「お、帰ってきたか。それで?ダンジョンの様子はどうだった?」
俺たちは簡単にダンジョンでのことを説明した。
ダンジョン化は危惧していた通りに結構進んでいたが、ボスモンスターはデュラハンであり、平和的に交渉が済んだこと。そのため、これからもしかしたら、あのダンジョンのモンスターが近くをうろつくかもしれないので、詳細はそちらでまた話し合ってくれということ。
かいつまみつつ以上2点を重点的に話した。
俺の不死力騒動のことは触れなかったが、まあ本題とは異なるからだろう。
「そうか、ご苦労だったな。では約束通り、タナカにはこれを上げよう」
そう言ってアデルに渡されたのは、ドッグタグのようなものだった。
革ひもに通された二枚の板には、青色で文様が描かれていた。
「なんだこれ?」
「それがこの街での会員証だ。よその街に行く時や、クエストを受けるときは必ず付けておけ、面倒なことに巻き込まれたくなかったらな」
「なるほどな」
早速俺は首からそいつを下げる。
自覚ありの中二病の俺は、ドッグタグのような会員証がいたく気に入った。
「そういやこの街でのって言ったよな。他の街だと違うのか、会員証のデザインとか?」
「街によって描かれているものが違うのよ」
そういってマチューが肩を突き出してくる。
なにしてんだこいつ、とおもったが、どうやら自分の肩に巻いているバングルを見せようとしていたらしい。
マチューの肩には木の板がついた革ひもがまかれていた。というか普通に会員証がまかれていた。
……首からかけるとサイズが合わなかったのだろうか。
マッチョも意外と苦労するんだな。
マチューの会員証は、黄色で俺のとは違う紋章が描かれていた。
なるほど、こうやってどこのどいつか見分けられるってわけか。
「ん?てことはマチューはこの街の人間じゃないのか?」
「そうね、結構長くいるけどここの人間じゃないわよ」
「なんか意外だな。ニアとも仲がいいからてっきりずっと知り合いだったのかと思ってたよ」
「ところで、我が愚妹はどうした」
会員証に関する話題が途切れたところで、アデルが気になっていたのだろう、マチューの背中にいるニアを指さす。
「頭が痛いのー」
「ただの二日酔いだ」
弱弱しい声でうめくニアと、肩をすくめる俺。
いつものことなのだろう、アデルは納得すると特に興味を失ったようだ。
「ところでタナカよ、このあとどうするのだ?この街にとどまるのか?」
言われ、何も考えていなかったことに気づく。
そうか、そうだよな。なんとなくこのままニアと一緒にいる気分だったけど、他人だしな。どうしよう。
「そうだなあ。実はあまり考えてなかったからな。とりあえずこの街にはとどまろうと思うよ」
「寝泊まりする場所は?」
「適当に宿でも借りるよ」
「ほう。金はあるのか?」
「……ないな」
俺が金欠だと知った瞬間アデルの目が光ったように見えた。
「そうか。ならばそこそこ金になるクエストがあるが、どうかな?」
「お受けしましょう!」
断る理由も特にないおれは即答した。
昨晩調子に乗って飲みすぎたからだろう、ひどく頭が痛い。視界もぐわんぐわんするし、これが二日酔いなら最悪だ。二度と酒なんか飲むもんか。
「不死力って言っても万能じゃないみたいね。外傷の治癒にだけ特化してるとかなのかしらね」
「あたしも頭痛い―。飲んでないのに―」
調子に乗った俺と、体質的に調子に乗れないニア。二人仲良く頭を押さえながら、街の門をくぐった。
とりあえずはギルドへ行って、アデルに報告だ。
ばかみたいに頭が痛いが、なにはともあれ、俺のはじめてのお使いはこれで終了だろう。
頭が痛い―、といいながらマチューにおぶられて運ばれるニアを見て、ちょっとうらやましい。
どっちがって?
どっちもだ。
足取り重く、とぼとぼと時間をかけてようやくギルドにたどり着く。
「アデルー!帰ったわよ」
扉を開け声を掛けると、カウンター奥からギルドマスター、アデルが出てきた。
暇だったのか、昼間っから酒を飲んでいるようだ。
現世のもので例えるなら、この世界の酒はエールだ。ビールのように泡があるわけでもなく、苦くない。
まあ現世でたくさん飲んだことがあるわけではないので、酒の味は正直分らないのだけどな。
ビールと違い苦みもなく、安物のワインのような酸味もない。むしろ香ばしさと甘さが感じられて、俺は結構好きだ。
「お、帰ってきたか。それで?ダンジョンの様子はどうだった?」
俺たちは簡単にダンジョンでのことを説明した。
ダンジョン化は危惧していた通りに結構進んでいたが、ボスモンスターはデュラハンであり、平和的に交渉が済んだこと。そのため、これからもしかしたら、あのダンジョンのモンスターが近くをうろつくかもしれないので、詳細はそちらでまた話し合ってくれということ。
かいつまみつつ以上2点を重点的に話した。
俺の不死力騒動のことは触れなかったが、まあ本題とは異なるからだろう。
「そうか、ご苦労だったな。では約束通り、タナカにはこれを上げよう」
そう言ってアデルに渡されたのは、ドッグタグのようなものだった。
革ひもに通された二枚の板には、青色で文様が描かれていた。
「なんだこれ?」
「それがこの街での会員証だ。よその街に行く時や、クエストを受けるときは必ず付けておけ、面倒なことに巻き込まれたくなかったらな」
「なるほどな」
早速俺は首からそいつを下げる。
自覚ありの中二病の俺は、ドッグタグのような会員証がいたく気に入った。
「そういやこの街でのって言ったよな。他の街だと違うのか、会員証のデザインとか?」
「街によって描かれているものが違うのよ」
そういってマチューが肩を突き出してくる。
なにしてんだこいつ、とおもったが、どうやら自分の肩に巻いているバングルを見せようとしていたらしい。
マチューの肩には木の板がついた革ひもがまかれていた。というか普通に会員証がまかれていた。
……首からかけるとサイズが合わなかったのだろうか。
マッチョも意外と苦労するんだな。
マチューの会員証は、黄色で俺のとは違う紋章が描かれていた。
なるほど、こうやってどこのどいつか見分けられるってわけか。
「ん?てことはマチューはこの街の人間じゃないのか?」
「そうね、結構長くいるけどここの人間じゃないわよ」
「なんか意外だな。ニアとも仲がいいからてっきりずっと知り合いだったのかと思ってたよ」
「ところで、我が愚妹はどうした」
会員証に関する話題が途切れたところで、アデルが気になっていたのだろう、マチューの背中にいるニアを指さす。
「頭が痛いのー」
「ただの二日酔いだ」
弱弱しい声でうめくニアと、肩をすくめる俺。
いつものことなのだろう、アデルは納得すると特に興味を失ったようだ。
「ところでタナカよ、このあとどうするのだ?この街にとどまるのか?」
言われ、何も考えていなかったことに気づく。
そうか、そうだよな。なんとなくこのままニアと一緒にいる気分だったけど、他人だしな。どうしよう。
「そうだなあ。実はあまり考えてなかったからな。とりあえずこの街にはとどまろうと思うよ」
「寝泊まりする場所は?」
「適当に宿でも借りるよ」
「ほう。金はあるのか?」
「……ないな」
俺が金欠だと知った瞬間アデルの目が光ったように見えた。
「そうか。ならばそこそこ金になるクエストがあるが、どうかな?」
「お受けしましょう!」
断る理由も特にないおれは即答した。
更新日:2018-02-04 16:33:19