• 96 / 128 ページ

第12章―Ⅵ:想いと嫉妬と破滅の力

「(どういう事だ!あれほど屋敷を離れるなと言ってたのに何故勝手に屋敷を出て街を彷徨いていたんだ!しかも賊に襲われ逃げられただと!)」

――ジーフェスの屋敷に戻ったラファイル達は、程無くして戻ってきたフェンリルから厳しい叱咤を受けていた。

「(申し訳ありませんフェンリル様。全てわたくしの失態で御座います)」

「(ったく…大方シャネリアがジーフェスに逢いたいと我が儘言って制止出来ずに向かう途中だったのだろう)」

「(……)」

見事な洞察力に二人は言葉が無い。
当のシャネリアは別室に居てこの場には居ない。

「(あとこれは襲撃された際に傍に落ちていたものです)」

ギアランが懐から先程拾った矢を渡すと、それをみたフェンリルとラファイルが表情を歪めた。

「(この紋様、間違いなくベッテン一族の矢ですな。ご丁寧に麻痺毒つきか…)」

「(ああ、奴ら、本気でシャネリアを捕まえる気満々だ。
しかしいくらベッテン一族とはいえ、あのぼんくら馬鹿についていく奴等も奴等だな)」

「「(はい…)」」

そこまで言って、三人して深い溜め息をついた。

「(あれに目をつけられたシャネリア様が余りにも憐れです…)」

「(そうだな。おまけにあの馬鹿親父がへましやがったお陰であいつにしつこく付きまとわれて、こっちが大迷惑だ!)」

怒りの余りにフェンリルは拳をローテーブルに叩き付けた。

「(フェンリル様…)」

「(何が何でもあの馬鹿からシャネリアを護れ!あと十日、十日もすればあの婚姻契約書が無効になる!それまで絶対にシャネリアをあやつの手に渡すなよ!)」

「「(御意!)」」


      *


――それから数日、
シャネリアは相変わらずジーフェスに逢う度に彼の傍に寄って甘えたり媚びを売ったりしてエレーヌと喧嘩になり、またある時はジーフェスとサーシャが二人きりで一緒に話をする中にあからさまに邪魔をしたり、またある時はシャネリアが強引に仕事場にやって来て自衛団の団員の前でいちゃいちゃしたりする日が続いた。

そんな彼女にジーフェスは忠告するものの改善の兆しが無いのについに辟易してしまい、何かにつけては仕事等に逃げて顔を合わせないようにしたし、サーシャにも必要以上に相手しないようにと忠告し、彼女もそれに従って出来るだけ顔を合わせず穏やかに数日を過ごしたのだが…、

「いい加減にしなさいよ!あんたサーシャ様を差し置いて那様の奥さん面しないでよっ!」

ある日いよいよぶちキレた(いや、毎日ぶちギレてはいるが…)エレーヌがシャネリアの胸ぐらを掴んで怒鳴りこんだ。

「(何よあんたっ!従者の存在でこの私に手出しするなんてっ!ラファイル、この無礼な女を始末しなさいっ!)」

「(し、しかし…)」

「煩いわねっ!どうせあんたの事だからあたしを追い出せだの処罰しろだの言ってるんでしょうけど、そんな事をさせるもんかっ!」

流石に数日も一緒に過ごして同じ事を繰り返していると、お互いに言葉の意味も少しは解ってきて喧嘩も遠慮が無くなってきていた。

「エレーヌさん、乱暴は駄目よ」

騒ぎを聞いてやってきたサーシャが流石に慌てて止めに入った。

「しかしサーシャ様、この女の図々しさはもう我慢出来ません!」

「それでも駄目よ!彼女は、ウルファリン国の大切な御客様よ。何より彼女の滞在はアルザス義兄様の、宰相様の勅命なのよ」

「……〜〜っ!!」

更新日:2018-10-06 14:52:24

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook