- 71 / 128 ページ
第12章―Ⅰ:異国からの襲撃者
――その日は朝から晴天の、だが異様に蒸し暑い日であった。
フェルティ国も、通常の炎(=夏)の時期とは違う異様な暑さに人々は辟易していた。
「……暑い」
久しぶりの休暇で屋敷に居たジーフェスもまた、余りの暑さにばて気味であった。
自分の部屋の中ということで、上半身裸の下着一枚の姿で扇子をあおぎ、足を桶に水をはったものに浸けて慰め程度に涼をとっていた。
「何だ今日の暑さは…こんな状態じゃあ昼間はまともに過ごせないぞ…」
流れる汗を拭きながら暫し考えていると、突然ぱたぱたと足音が聞こえてきた。
「…?」
“あの足音はエレーヌか?あんなに急いで一体何事だ?”
「旦那様ー大変で…?!きゃあああっ!」
ジーフェスがそう思うや否や、ノックもそこそこにいきなり扉が開かれて突然エレーヌが姿を現し、だが目の前のジーフェスのみっともない姿に思い切り叫びだした。
「な、何ですか旦那様あっ!そんな破廉恥な格好なんてーっっ!!」
顔を反らしながらも、ちらちらと視線を向けつつ大きな声で叫ぶエレーヌ。
「な…俺の返事を聞かずにお前がいきなり扉を開けるからだろうっ!」
ジーフェスも慌てたように飛び上がって部屋の隅に移動して、慌ててそこに置いていた服を着ていく。
「あっ、そうだった!大変なんですっ!サーシャ様が倒れてしまったのですぅー!」
「サーシャが、倒れた!?」
*
「…少し熱があって汗が余り出ていない、脈が少し乱れているから恐らく水分不足による軽い熱中症だろう。大丈夫、生命に関わるものではない」
客間のソファーで横になっていたサーシャにジーフェスが触診等をしてからそう告げた。
「すみません、心配かけてしまって…つい庭のお手入れに夢中になってしまって…」
弱々しくそう言うと、サーシャは窓から見える庭に視線を向けた。
今日はこの暑さの為に庭の整備はお休みになっていた。
「庭の手入れをしていたのか!こんな暑い日に長時間外に出るのは駄目だよ!
今日は無理しないで涼しい部屋でゆっくりと身体を休めて、砂塩水(=イオン飲料のような飲み物)を飲むように、解った?」
「はい…」
ジーフェスから少し窘めるように言われてしまい、しゅんとなるサーシャ。
「でも大したこと無くて良かったです〜」
エレーヌがレモン入りの砂塩水を持ってきてサーシャに手渡した。
「はい、ハックさん特製のレモンと蜂蜜入り砂塩水、すっごく美味しいですよー」
「ありがとうございます」
エレーヌからグラスを受け取ったサーシャは早速口をつけてみた。
「美味しい。レモンの酸味と仄かな甘味に…微かな塩味がとても合ってて飲みやすいです」
余りの美味しさと喉が渇いていた事もあって、サーシャは一気に中身を飲み干してしまった。
「おいおい、一気に飲むとお腹にくるぞ」
そんなサーシャの様子に苦笑いしながらも安心したように呟くジーフェス。
「お前達も仕事の合間に砂塩水をこまめに飲んどけよ。特にタフタは高齢者だから暑さに鈍いからな、気付いた時は手遅れの可能性もあるぞ」
「はーい、ハックさんに言って沢山作って貰っておきまーす」
呑気に返事して、ぱたぱたと台所に戻るエレーヌを見て、ジーフェスはふうと息を吐いた。
「さて…部屋には戻れるかい?」
フェルティ国も、通常の炎(=夏)の時期とは違う異様な暑さに人々は辟易していた。
「……暑い」
久しぶりの休暇で屋敷に居たジーフェスもまた、余りの暑さにばて気味であった。
自分の部屋の中ということで、上半身裸の下着一枚の姿で扇子をあおぎ、足を桶に水をはったものに浸けて慰め程度に涼をとっていた。
「何だ今日の暑さは…こんな状態じゃあ昼間はまともに過ごせないぞ…」
流れる汗を拭きながら暫し考えていると、突然ぱたぱたと足音が聞こえてきた。
「…?」
“あの足音はエレーヌか?あんなに急いで一体何事だ?”
「旦那様ー大変で…?!きゃあああっ!」
ジーフェスがそう思うや否や、ノックもそこそこにいきなり扉が開かれて突然エレーヌが姿を現し、だが目の前のジーフェスのみっともない姿に思い切り叫びだした。
「な、何ですか旦那様あっ!そんな破廉恥な格好なんてーっっ!!」
顔を反らしながらも、ちらちらと視線を向けつつ大きな声で叫ぶエレーヌ。
「な…俺の返事を聞かずにお前がいきなり扉を開けるからだろうっ!」
ジーフェスも慌てたように飛び上がって部屋の隅に移動して、慌ててそこに置いていた服を着ていく。
「あっ、そうだった!大変なんですっ!サーシャ様が倒れてしまったのですぅー!」
「サーシャが、倒れた!?」
*
「…少し熱があって汗が余り出ていない、脈が少し乱れているから恐らく水分不足による軽い熱中症だろう。大丈夫、生命に関わるものではない」
客間のソファーで横になっていたサーシャにジーフェスが触診等をしてからそう告げた。
「すみません、心配かけてしまって…つい庭のお手入れに夢中になってしまって…」
弱々しくそう言うと、サーシャは窓から見える庭に視線を向けた。
今日はこの暑さの為に庭の整備はお休みになっていた。
「庭の手入れをしていたのか!こんな暑い日に長時間外に出るのは駄目だよ!
今日は無理しないで涼しい部屋でゆっくりと身体を休めて、砂塩水(=イオン飲料のような飲み物)を飲むように、解った?」
「はい…」
ジーフェスから少し窘めるように言われてしまい、しゅんとなるサーシャ。
「でも大したこと無くて良かったです〜」
エレーヌがレモン入りの砂塩水を持ってきてサーシャに手渡した。
「はい、ハックさん特製のレモンと蜂蜜入り砂塩水、すっごく美味しいですよー」
「ありがとうございます」
エレーヌからグラスを受け取ったサーシャは早速口をつけてみた。
「美味しい。レモンの酸味と仄かな甘味に…微かな塩味がとても合ってて飲みやすいです」
余りの美味しさと喉が渇いていた事もあって、サーシャは一気に中身を飲み干してしまった。
「おいおい、一気に飲むとお腹にくるぞ」
そんなサーシャの様子に苦笑いしながらも安心したように呟くジーフェス。
「お前達も仕事の合間に砂塩水をこまめに飲んどけよ。特にタフタは高齢者だから暑さに鈍いからな、気付いた時は手遅れの可能性もあるぞ」
「はーい、ハックさんに言って沢山作って貰っておきまーす」
呑気に返事して、ぱたぱたと台所に戻るエレーヌを見て、ジーフェスはふうと息を吐いた。
「さて…部屋には戻れるかい?」
更新日:2018-07-24 12:10:31