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「いえ、いきなり姿が見えなくなって驚いただけです。あ、もうすぐ夕食ですのでご案内致しますね」

「え?もうそんな時間かい」

ナルナルの言葉にジーフェスが驚いたように辺りを見回した。
見れば空が微かに赤い色に染まり、風も冷たさが混じってきている。
この国の者なら何も感じないだろう風だったが、暖かいフェルティ国に慣れてるジーフェスにとっては身を震わせる風であった。

「ねえナルナル、メリンダ姉様はいつ逢えるのかしら?」

「メリンダ様は会議が長引いておりまして、未だ終わる様子では御座いません。恐らく今日はこちらには戻られないかと…」

「そう…残念ね」

ナルナルの言葉に、サーシャはがっくりと肩を落とした。

「でも明日はお休みですので、一日中サーシャ様とお付き合いすると伝言を承りました」

「本当なのナルナル!」

「はい、だから元気を出して下さいませ」

「ええ」

やっと笑顔が戻ったサーシャに、ナルナルはほっとした。

「そういえばここを綺麗にしてくれたのはナルナル、貴女なの?」

「はい、時間の許す限りですが、定期的にこの屋敷と庭を綺麗にしてきました」

「そう…ありがとう。貴女のお陰で今夜はこの屋敷でゆっくり出来るわ」

サーシャの嬉しそうな呟きに、何故かナルナルはきょとんとした表情を浮かべた。

「え?サーシャ様はジーフェス様と御一緒にお休みになられますよね?」

「…え?」

「侍女長からはあの客間で御二人共にお休みいただくよう命じられましたけど。それに御二人は夫婦ですよね、ならば一緒の御部屋で過ごされるのは当然かと思いますが…」

「「……」」

ナルナルの言葉にサーシャもジーフェスも言葉が無かった。

“そ、そうよね。聞いた話では夫婦というものは一緒の部屋で一緒に過ごすものだと聞いていたけど…”

“確かに俺達は夫婦だから、普通ならば一緒の部屋で過ごすのは当然なのだが…”

ふと二人はお互いの顔を見合わせた。

“でも私達は未だ夫婦の儀式は行っていないわ。確かに口づけはしたけど、今も寝室は別だし、ジーフェス様も焦る必要は無いと仰有っていたし…”

“だけど俺達は未だ夫婦としての交わりどころか、夜も別々に寝ているぞ。何よりサーシャにとっては一緒に寝るなんて早すぎるだろうし、何より俺が我慢出来ないだろうし…”

…どうしたらよいの?

…どうしよう?

戸惑いの瞳でお互い見つめ合いながら、二人とも同じ気持ちに悩んでしまい、言葉が無かったのであった。

更新日:2018-01-14 20:51:52

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