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“ふふ…皆がわたくしの美しさに注目しているわ。今夜の主役はわたくしで決まりね”

二人して腹黒い思惑にほくそ笑んでいると、突然どよめきがあがった。

見れば丁度上座の辺りに女王ジェスタが二人の人物と共に現れた。

「皆の者!」

女王の一声に皆が静まり、上座に注目した。

「今宵は我が夜会への参加、誠に感謝する。この夜会は我が王家に忠実たるそなた達の労いと、我が末妹の紹介を兼ねたものである」

そう告げると女王は傍にいた二人…礼装姿のサーシャとジーフェスに視線を向けた。

「我が末妹にて第4王女のサーシャとその夫のジーフェスであるぞ。良しなにな」

女王に促され、二人は一歩前に出るとゆっくりと一礼するのだった。
そんな二人の姿を見留めた人々は、意外な姿にどよめき始めた。

「あれが『忌まわしき』神託を受けし王女か。成る程、見た感じ王家の威厳も無い只の小娘だな」

「まあ、あれがサーシャ王女様…噂とは違って、なかなかに凛とされた御方ではありませんか」

周りの人々はサーシャに対しては賛否両論であったが、特に関心を集めたのは何故かサーシャではなくジーフェスのほうであった。

「成る程、蛮族の王子らしい見掛けだな。威厳も何もない」

「サーシャ王女の伴侶として選ばれたくらいだ。どんな者かと思えば…お似合いの二人だな」

あからさまな侮蔑を見せる人々の中で、だが何人かの態度は違っていた。

「蛮族の国の王子と聞いていたが、見た目なかなかの好青年のようだし何よりあの瞳…」

「ええ、まるで我らが雄神、ライアス様を思わせるような純粋な翠の瞳だこと!」

「我が神ライアス様の瞳と魂を持つ御方だ、だからこそサーシャ王女様の伴侶に選ばれたのだな!」

ジーフェスの瞳、雄神ライアスと同じ翠の瞳、アクリウム国に於いては非常に珍しいそれに賛辞を贈るのであった。

「我がアクリウム国の繁栄を願って、乾杯!」

女王陛下による乾杯の音頭の後、早速何人かが二人に近寄り挨拶を交わし、好意的に話をする様子に、良い意味でも悪い意味でも注目を取られてしまったヤルドとマルガレータは面白くない。

“な、何だ何だ!?『忌まわしき』王女と蛮族の王子ということで嘲笑の嵐になるかと思えば…一体どういう事だ!”

「お父様…」

「解っておる娘や…おい」

ヤルドは傍にいた男を呼びつけ、ひそひそと何やら命ずると男は頷きサーシャ達に群がる人々の中へと入っていった。

“ふん、我が娘をこけにしおって。見ておれ”

“何よ!サーシャ王女なんて胸ぺったんこのおこちゃまじゃないの!何で彼女が私よりも注目を浴びるのよ!”

一方のマルガレータのほうは自分への注目が半分以上奪われたことに対して、怒りの視線をサーシャに向け、それからちらりとジーフェスのほうを見た。

“蛮族の王子ね…ふん、私の好みでは無いけど、あの翠の瞳は確かに素敵だわ。まるで深緑の翡翠石(エメリシアン)のよう…”

二人が寄り添い、微笑む姿を見て何か思い付いたのか、にやりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。

“ふふ…ちょっと彼を使っておふざけでもしてみようかしら…”


      *


何人か人々に囲まれ、紹介を受けていたサーシャとジーフェスは予想外の事に驚きつつも笑顔を浮かべて立派に対応していた。

“やはりサーシャはアクリウム国の王女なのだな。初めての夜会だろうに皆の注目にも動ずる事も無いし、メリンダ殿はサーシャや俺に対して危惧していたが、取り越し苦労だったな”

更新日:2018-04-12 07:56:53

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