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“ゆ、夢じゃないっ!げ、現実にあったかいっ!”

「嘘、だろ…。何でサーシャがここに…」

現実に驚き疑問を抱くより先に、すっかり安心したように熟睡しているサーシャの優しげな寝顔に、ジーフェスはついつい見とれてしまい、思わずごくりと息を呑んだ。

“可愛い、な。凄く安心した寝顔で…意外と睫毛が濃くて唇がほんのりと綺麗な桜花色、いや、薄い紅色、というべきなのかな…”

熟した甘い果実に似たその唇に、つい食べてみたいという欲情を感じてしまい、そっと顔を近付けた。

“す、少しくらい、ほんの少し触れるくらいなら…大丈夫、だよな”

「サーシャ…」

そしてあと僅かで二人の唇が重なろうとしたその時、突然部屋の扉が叩かれたのだった。

「うわあっ!!」

“お、お、俺は今何をっ!?”

「おはようございますジーフェス様にサーシャ様。朝食の準備が出来ましたが如何致しますか?」

扉の外から聞こえるナルナルの声に我に帰ったジーフェスは心臓をばくばくいわせながら、思わずサーシャから後退りしていった。

「……ん」

ナルナルの声かジーフェスの声にか反応したのか、サーシャが微かに身体を動かし目を覚まそうとしたが、未だ眠気のほうが強かったらしく、再び眠りに落ちようとしていた。

「サーシャ、まだ眠っているのサーシャ?」

だが次に扉の外から聞こえてきた綺麗な澄んだ声に、はっとなったようにぱちっと目を覚ました。

「メリンダ…姉様?」

「サーシャ、いい加減に起きなさい。もうお昼になろうとしているわよ…」

「メリンダ姉様っ!」

懐かしい姉メリンダの声に、サーシャはぱあっと喜びも露にベッドから飛び起きると、隣に居たジーフェスを完全に無視して一目散に扉に駆け寄るのだった。

「メリンダ姉様!」

扉を開けるなり、目の前にいた愛しい姉に思わず抱き付くサーシャ。

「あらあらサーシャ、今まで眠っていたのかしら?未だ寝着のままじゃないの」

妹の姿に半ば呆れつつも、嬉しそうに抱き締め返すメリンダ。こちらもかなり表情が綻んでいる。

「おはようございますサーシャ様」

二人の嬉しそうな様子を見てナルナルもつい頬が緩んでしまっている。

「おはようナルナル。ねえ朝食は未だかしら?」

するとナルナルは半ば呆れたように笑いながら告げるのだった。

「とっくの昔に準備しております。メリンダ様もサーシャ様と一緒に食事したいとお待ちですわよ」

「本当?嬉しいっ!メリンダ姉様ありがとうっ!」

「まあサーシャったら…」

「その前に先ずは身仕舞いをして頂きますね」

ナルナルの声にサーシャはやっと自分の身なりに気付いたのだった。

「やだ、私ったらまだ寝着のままだったわ」

恥ずかしがるサーシャに、メリンダとナルナルはころころと辺りに響く程笑い声をあげるのだった。

「………………」

三人で和気藹々に話すのに対し、完全に蚊帳の外状態のジーフェスは、ベッドの上でただ呆然と彼女らの様子を眺めていた。

“俺は、一体…”

彼の存在などまるで無いかのように暫くの間和気藹々と話をする三人に、ジーフェスはベッドの上で言葉もなく呆然とするだけであった。

更新日:2018-02-15 00:12:51

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