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八文銭
八っぁんの家の玄関先に死神がやってきた。
家と言っても時代劇によく出てくるどぶ板長屋
戸なんぞ勢いよく開けたもんならバラバラに崩れてしまうような貧乏長屋の前に死神が現れた
戸の破れ障子の隙間から鬼が覗いているのを見て八は驚いた。
そりゃそうだ鬼なんてめったにお目にかかれるもんではない。
勿論八は鬼を見るのは初めてだ
普通ならば怖くて腰を抜かすもんだが八は珍しいものを見つけた子供のように戸をガラガラと開け飛び出して行って鬼を「フムフム」なんて言いながら甞める様に眺めている。
「八っぁんかな」
鬼が日本語で話しかけて来たのに驚く様子もなく
「なんで俺の事を知ってんの」
死神が来た!と長屋の連中はピタリと戸を閉め息を殺して聞き耳を立てていたが、自分のところに来たのではないと知ってホッとした。
八っぁんのところへ来たと知って長屋の連中がぞろぞろと出てきた。
八はおっちょこちょいな所もあるが曲がったことの大嫌いなお人好しで長屋の連中に好かれている。
そんな八のところに死神が来たなんて恐ろしいより何とか間違いであってほしいと遠巻きに成り行きを見守っている。
「もし八をあの世に連れてゆくなら代わりにあたしを代わりに連れて行っておくれ!」
なんて殊勝なことは誰も言わないが。
「お前さんほんとにほんとの鬼かい」
普通は鬼の姿を見ただけで卒倒するか怖さで口もきけない人間ばかり。
「そうだ」大抵は忌み嫌われるキャラの鬼が親し気に寄ってきた八に困惑している。
「で、なにかいおいらに用事でもあるのか。それとも届け物でも持ってきたのかい」
「儂のこと知らぬのか」
「知らないねえ。どころか節分のぬいぐるみの鬼しか見たことないね」
「儂は死神だ」
「死神って、あの死にそうな人間を迎えに来るって言われてる神様かい」
「そうだ」
「へえ~鬼が神様なんぞ初めて聞いた」
死神はコホンと一息入れて
「昔から鬼は神だ」
八に言っても詮無いことだと死神は思った。
きょとんとした顔で八は死神を見ていたが
「で死神さんがおいらの所に来たということはだな。おいらは死ぬということだ」
身に覚えがないなとブツブツ八は呟いている。
八っぁんの家の玄関先に死神がやってきた。
家と言っても時代劇によく出てくるどぶ板長屋
戸なんぞ勢いよく開けたもんならバラバラに崩れてしまうような貧乏長屋の前に死神が現れた
戸の破れ障子の隙間から鬼が覗いているのを見て八は驚いた。
そりゃそうだ鬼なんてめったにお目にかかれるもんではない。
勿論八は鬼を見るのは初めてだ
普通ならば怖くて腰を抜かすもんだが八は珍しいものを見つけた子供のように戸をガラガラと開け飛び出して行って鬼を「フムフム」なんて言いながら甞める様に眺めている。
「八っぁんかな」
鬼が日本語で話しかけて来たのに驚く様子もなく
「なんで俺の事を知ってんの」
死神が来た!と長屋の連中はピタリと戸を閉め息を殺して聞き耳を立てていたが、自分のところに来たのではないと知ってホッとした。
八っぁんのところへ来たと知って長屋の連中がぞろぞろと出てきた。
八はおっちょこちょいな所もあるが曲がったことの大嫌いなお人好しで長屋の連中に好かれている。
そんな八のところに死神が来たなんて恐ろしいより何とか間違いであってほしいと遠巻きに成り行きを見守っている。
「もし八をあの世に連れてゆくなら代わりにあたしを代わりに連れて行っておくれ!」
なんて殊勝なことは誰も言わないが。
「お前さんほんとにほんとの鬼かい」
普通は鬼の姿を見ただけで卒倒するか怖さで口もきけない人間ばかり。
「そうだ」大抵は忌み嫌われるキャラの鬼が親し気に寄ってきた八に困惑している。
「で、なにかいおいらに用事でもあるのか。それとも届け物でも持ってきたのかい」
「儂のこと知らぬのか」
「知らないねえ。どころか節分のぬいぐるみの鬼しか見たことないね」
「儂は死神だ」
「死神って、あの死にそうな人間を迎えに来るって言われてる神様かい」
「そうだ」
「へえ~鬼が神様なんぞ初めて聞いた」
死神はコホンと一息入れて
「昔から鬼は神だ」
八に言っても詮無いことだと死神は思った。
きょとんとした顔で八は死神を見ていたが
「で死神さんがおいらの所に来たということはだな。おいらは死ぬということだ」
身に覚えがないなとブツブツ八は呟いている。
更新日:2017-10-19 10:14:50