• 47 / 106 ページ
「ささ、お菓子も食べて下さいな」
 シンが気を利かせて、菓子皿を勧めた。インも自ら菓子をつまみながら、違う話題を口にし始めた。
「ときに、俺から、一つ依頼をしたいのだが……あんたらの首領……モザ・フ・ブツさんとかに掛け合わなきゃならないの?」
「はぁ……御用にもよりますが……いったい、どのような……」
「うん。調べてもらいたいことがあるんだ。実は、うちのツヒさんのことで……」
「ツヒさん……執事の?」
「ああ。彼は、先代のときから、レトナ家の勘定を任されているが、いくばくかの金子を横領している。それは、俺の代になっても変わらない。額自体は、大した額ではない。しかし、家の子の一人が、ツヒさんが、横領した金子らしきものを、誰かに渡しているところを見ているんだ」
「それが、誰であるかと?」
「うん……どうだろう。もちろん、これはレトナ家の当主である俺と、モザ一族との契約だ。受けてくれれば、報酬は支払う」
「はぁ。それでしたら、今の任務の中のものとして請け負います。まだ、レトナ家と正規軍との間のつなぎと情報収集の役目は続いています。レトナ家のための情報収集ということで、承りました」
 そう言うと、カコはマトと顔を見合わせた。
「いや。これは、叛乱軍との戦とは関係ない。ちゃんと正規の報酬は支払うから、遠慮なく言ってくれ」
「フフフ、すでに報酬として、美味しいお酒を頂いておりますから……」
 微笑しながら、カコが三つ指をついた。人より二まわりも豊かな胸の大きさとたおやかさが相まって、何とも言えない色気を漂わせていた。マトがカコに対して、仕事上の相棒としての感情以上のものをもっていることを、酒席のときからインは感じ取っていたし、それは、無理からぬものとも思えた。
 ただ、カコの方がマトよりも年長かつ仕事上も先輩らしく、マトの感情を受け止めているのかはよく分からなかった。

更新日:2018-02-12 14:07:12

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

クラムの物語 -カース・イン- 第一巻 革命立国