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最終話 黄昏のコロニー


 …コックピットのメインパネルには、相手の撃墜を報せる
 アラートが表示されていた。
 フィーグ・ロワイトは、ただ茫然としたまま、それをみつめて
 いた。
 「RX-78-01(N)」…別名「MSD R017」・「局地型ガンダム」が、肩部に
 装備されたショルダーキャノンで、遠方の「MS-06」・「ザク」を
 見事に撃ち抜いたのだ。

  (いまのは…俺が…?)

 さっきそれを撃ったのは確かに自分のはず…だったが、彼は
 なぜかそれが信じられなかった。

  (フィーグ!)

 …そこへリィナ・シュラモンの声が飛び込んでくると同時に、
 彼女の顔がメインパネルの隅に表示される。
 そして、こちらにゆっくりと近づいてくる
 「RX-77-R190」・「ガンキャノン」の姿があった。

  (いまのは…)
  「あ?…ああ、大丈夫か、リィナ?」

 どこかフィーグの様子がおかしい。
 まるで、さっきザクを撃墜したことなど、まったく知らない
 かのように…である。

  「それより敵は?」
  (もういないわ。それよりあなた…さっきの…)

 …ガンダムからリィナと対峙していたザクとのあいだには
 距離があった。
 それを…フィーグは正確に撃ち抜いたのである。
 しかも、そこまで内部の照準システムがアシストするとは
 思えないのだが…。

  「すまない。…っていうか、きっと偶然だったんだ」
  (フィーグ…?)

 密かな疑問を抱くリィナであったが…彼女はそれ以上、
 聞こうとはしなかった…。
 だが…。
 フィーグのことを、俗にいう「ニュータイプ」なのでは
 ないか…?と、リィナはそう感じずにはいられなかった…。



 …そこは夕暮れだった。
 しや…先の通り、ここでは時間というものが正確に制御されて
 いない理由から、その時間というものが変わることはない。

  (これがテキサスコロニー…)

 フィーグはふと、夕暮れ時のそれに、何か黄昏のようなものを
 感じずにはいられなかった。
 …と、そこに彼の目に留まるものがあった。
 …それは牛だった。
 どうやら放牧されたものと思われる。

  (こんなところで…生きていられるなんて…)

 …そこにリィナからの通信が入ってくる。
 彼は慌てて彼女の機体の後に続いた。


 リィナとフィーグは、先の戦いでルクト・アディーナらが交戦
 した地点までたどり着いていた。
 …ふとレーダーが何かの反応を捉えた。
 ごく微弱だが、それは生命反応の様であった。

  「…ルクト!?そこにいるの!?」

 リィナが慌てて通信回線を開き呼び掛ける。
 …だが、その返事は返ってはこなかった。
 リィナとフィーグは機体を降着状態すると、すぐに外へと
 出た。
 再びルクトの「RGM-79(G)-R202」・「陸戦型ジム」にとりついた
 リィナは、外部からコックピットハッチを開いた。

  「ルクト!?」

 コックピットの中には、首を垂れたままのパイロットが
 いた。
 それは紛れもなくルクトであった。
 …気を失っているのであろうか?

  「ルクト!ちょっと、しっかりして!」

 リィナはルクトの両肩を揺さぶった。
 すると…。

  「う…うぅん…あぁ?…リィナ…?」

 …どうやら内部で過ごしてしているうちに、疲れて
 しまったのか、そのまま眠りこけてしまったらしい。

  「よかった…無事で…」

 彼女は安堵すると、大きくため息をついた。

更新日:2017-11-23 09:17:14

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機動戦士ガンダムR191 第二編/「黄昏のコロニー」