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宇都宮悟
「ただいまー。」
いつものように部活動から帰ってきた悟は、慌ただしく靴を脱ぐと、カバンを放り投げて洗面所に向かった。
「ふいー、疲れた。さー風呂風呂。」
制服を脱ごうとして、ふと、風呂場へのドアのガラス窓に湯気がないことに気づいた。
「あれ?」
ドアを開け浴槽を見ると湯は張っていなかった。
「母さん、風呂入れ忘れたのかな?おかしいな、予約で自動的に入るのに。」
悟は給湯器のボタンを電源を入れようとした。が、画面には何も表示されない。
「あら、悟。おかえり。実はね、お風呂、壊れちゃったみたいなのよ。」
悟の母が洗面所の戸口に立っていた。
「ええー、どうすんだよ。俺、汗かいたから風呂入りたいのに。」
「仕方ないでしょ。業者さん、明日の昼間に直してくれるから、今日は銭湯、行ってね。はい、これ。」
そう言って悟の母はタオルと千円札、着替えを悟に差し出した。
「ま、いいけどさあ。」
悟はそれらを受け取ると、玄関に向かった。
「先、ご飯食べたら。お腹空いてるでしょ。」
「いいよ、ベタベタしてて気持ち悪いから。」
そう言って靴を履くと、悟は夜の街に駆け出した。
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夕飯時だからか、銭湯は空いていて、悟のほかには客が1人いるだけだった。
悟は手早く体を洗い流すと、浴槽に入り思い切り手足を伸ばした。
「ああ、生き返る。」
思わずそう呟いた。
部活動で疲れた筋肉を、熱い湯がほぐしてくれるような気がした。
やっぱり運動した後は風呂が気持ちいい。
「兄ちゃん、高校生かい。」
先に湯船に浸かっていた客が悟に声をかけた。悟が顔を向けると、30歳くらいの、土方風の男が目に入った。
悟はこういった会話をあまり怖いとは思わない性格だったので、気楽に答えた。
「いえ、中1っす。」
男は驚いた顔をした。
「ほんとか。それにしちゃいい体してんな。」
事実、悟は中学1年生にしては身長も高く体つきもがっしりとしていたため、よく年上に間違えられることも多かった。悟は特に気にしていなかったし、体の大きさをからかわれることもあったため、むしろ体を褒められるのは悪くないと思った。
「鍛えてんのか?」
男が続けて聞いた。
「はい、バスケ、部活でやってます。」
「そりゃ、それだけ身長あれば先輩にだって勝てるんじゃねえの。」
「そんなことないですよ。背が低くてもうまい先輩はたくさんいるんで。」
話がだんだんと弾んできた。そうすると、男の会話の行き着く先は大体下世話な話題にもなる。
「兄ちゃん、さっきはタオルで隠してたけど、毛とかはどうなのよ。生えてんのか?」
男が変わらぬ調子で悟に聞いた。
いつものように部活動から帰ってきた悟は、慌ただしく靴を脱ぐと、カバンを放り投げて洗面所に向かった。
「ふいー、疲れた。さー風呂風呂。」
制服を脱ごうとして、ふと、風呂場へのドアのガラス窓に湯気がないことに気づいた。
「あれ?」
ドアを開け浴槽を見ると湯は張っていなかった。
「母さん、風呂入れ忘れたのかな?おかしいな、予約で自動的に入るのに。」
悟は給湯器のボタンを電源を入れようとした。が、画面には何も表示されない。
「あら、悟。おかえり。実はね、お風呂、壊れちゃったみたいなのよ。」
悟の母が洗面所の戸口に立っていた。
「ええー、どうすんだよ。俺、汗かいたから風呂入りたいのに。」
「仕方ないでしょ。業者さん、明日の昼間に直してくれるから、今日は銭湯、行ってね。はい、これ。」
そう言って悟の母はタオルと千円札、着替えを悟に差し出した。
「ま、いいけどさあ。」
悟はそれらを受け取ると、玄関に向かった。
「先、ご飯食べたら。お腹空いてるでしょ。」
「いいよ、ベタベタしてて気持ち悪いから。」
そう言って靴を履くと、悟は夜の街に駆け出した。
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夕飯時だからか、銭湯は空いていて、悟のほかには客が1人いるだけだった。
悟は手早く体を洗い流すと、浴槽に入り思い切り手足を伸ばした。
「ああ、生き返る。」
思わずそう呟いた。
部活動で疲れた筋肉を、熱い湯がほぐしてくれるような気がした。
やっぱり運動した後は風呂が気持ちいい。
「兄ちゃん、高校生かい。」
先に湯船に浸かっていた客が悟に声をかけた。悟が顔を向けると、30歳くらいの、土方風の男が目に入った。
悟はこういった会話をあまり怖いとは思わない性格だったので、気楽に答えた。
「いえ、中1っす。」
男は驚いた顔をした。
「ほんとか。それにしちゃいい体してんな。」
事実、悟は中学1年生にしては身長も高く体つきもがっしりとしていたため、よく年上に間違えられることも多かった。悟は特に気にしていなかったし、体の大きさをからかわれることもあったため、むしろ体を褒められるのは悪くないと思った。
「鍛えてんのか?」
男が続けて聞いた。
「はい、バスケ、部活でやってます。」
「そりゃ、それだけ身長あれば先輩にだって勝てるんじゃねえの。」
「そんなことないですよ。背が低くてもうまい先輩はたくさんいるんで。」
話がだんだんと弾んできた。そうすると、男の会話の行き着く先は大体下世話な話題にもなる。
「兄ちゃん、さっきはタオルで隠してたけど、毛とかはどうなのよ。生えてんのか?」
男が変わらぬ調子で悟に聞いた。
更新日:2017-10-01 14:43:19