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使い魔猫

ミレーヌは森の奥に一人で住んでいました。
彼女は魔女なのです。
まだ若い女の子のように見えますが、
たくさんの魔法を知っていますし、不思議な薬も作れます。
人々は魔女を嫌っていましたので、
無駄な争いが嫌なミレーヌは森へ移ったのでした。

さて、このミレーヌが日課にしている紅茶の時間のこと。
お昼を少し過ぎても深い森は薄暗く静かです。
ミレーヌは一人きりの時間が好きでしたから、
こうして外で紅茶を飲むのがお気に入りなのです。
どうせ、いつになっても誰も来ないけど。
そう思っていたのですが、この日は一人――
もっと正しく言えば一匹――のお客さんがやってきました。
「ねえ」
といきなり声をかけられ、ミレーヌは驚いて声の主を見ました。
視線は思ったよりも低い位置に向きました。
それは一匹の猫でした。
白と黒のぶち猫です。
「君は魔女なんでしょ?」
「そうだけど」
ミレーヌはそっけなく答えて、
邪魔をしないでよ、と心の中でつぶやきました。
けれど猫はまだまだいなくなりそうにありません。
「ねえ」
「何よ」
「僕を使い魔にしてよ」
ミレーヌは驚きました。
魔女の使い魔になる猫はみんな黒猫なのです。
「あんたは白黒だからダメよ」
「どうしても?」
「当たり前じゃない」
それを聞いて猫はすっかり落ち込んでしまいました。
ミレーヌは少しかわいそうだとも思いましたが、
それより早く帰ってほしい気持ちでした。
猫はうつむいたまま動こうともしません。
ミレーヌは仕方なく声をかけました。
「ダメなんだから、帰ったら」
猫はやっぱりじっとしたまま。
ミレーヌはまだ残っている紅茶を早く飲んでしまいたかったので、
「じゃあ、黒猫になってまた来なさい。
 そうしたら使い魔にしてあげる」
と、適当なことを言ってみました。
「でも、それじゃあ・・・」
猫は何か言いかけましたが、
「ううん、やっぱりなんでもない。
 がんばって黒くなってくるよ」
そう続けて去っていきました。
ふう、とミレーヌはため息をついて紅茶を一口飲みました。
黒猫になったら、と言ってしまいましたが、
黒猫になっても使い魔にする気はありません。
ミレーヌは一人きりでいたいのです。
もしも本当に黒猫になってきたらどうしよう。
少し心配になりましたが、きっと黒くなんてなれないわ、
そんな方法知ってるはずないもの、と考えて、
それっきりミレーヌは猫のことを忘れてしまいました。

更新日:2017-09-17 20:18:00

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