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「女子高校生がそんな汚い言葉遣いをするんじゃありませんよ」
「言葉遣いなんて今に始まった事じゃ無いだろうが。なに、まともな保護者ぶってんだ今更。おい、このロリコン」
「ロリコっ・・・、英子お前、何か勘違いをしていないか」
「何だよ、何が違うんだよ。幼女なんて単語を口にするような男は皆ロリコンだってのは、社会の常識だろう」
「お前、その幼女じゃないよ。戸籍上家族になるって意味の養女のことだぞ」
「はい? さっきから、ようじょ、ようじょ。うるせぇなぁ。日本語喋れよ。意味不明だぞ」
「だから、幼女じゃなくて、養・女、だ!」
「一緒じゃねーか、バカ野郎!」
怒れる少女はソファーに付属している正方形のクッション達と、序でに手に持っていたハンドスピナーを父へと投げつける。それらすべては、椅子に座って振り向く彼の側頭部に見事的中した。
「痛っ、いった! ゴメン、ごめんなさい! お願いだから物を投げないで! 分かったよ、ゴリラでも分かるように今から説明してやるから、こっちおいで!」
「てめぇ、今私のことをゴリラ扱いしやがったな。許さねぇ、私はあれ程図体デカくねぇよ。せめて、チンパンジーにしろっていつもいってんだろが!」
「だからボーダーライン低くない!? ゴリラとチンパンジーってほぼ同等だよね!」
過激なデモ活動が一段落すると、彼女は散らかったクッションやらには目もくれず、光成の施したとおりにダイニングテーブルの席に着いて説明を大人しく聞くことにした。
「俺がこの二日間どこに行ってたかは知ってるよな」
「勇輝叔父さんの奥さんの通夜と葬式だろ」
「そうだ。そこで、こんな話が出た。勇輝は行方不明になって半年経つし、妻である月埜さんも亡くなった今、娘である優那ちゃんの身元を誰か預かるべきじゃないかと。優那ちゃんもまだ中学二年生だ。一人暮らしをするには、少々若すぎる」
「待ってくれ、勇輝叔父さんに娘が居たなんて、私知らなかったぞ」
「え、嘘だろ。一度も顔合わせたことなかったか」
光成の弟である勇輝の一家は三年程前に光成の住むマンション近くに引っ越してきており、二人は互いの家へと頻繁に晩酌するのに赴いていた。
しかし、奇しくも英子自身は叔父である勇輝の自宅に押し掛けたことはなく、また、彼の妻である月埜やその娘であるらしい優那が自宅に遊びにくることも一度としてなかった。
英子は自宅に勇輝が来れば挨拶程度はしたし、温かいおつまみを作って振る舞いはしたが、積極的に関わり合いを持とうとはしなかった。だって彼女の中で彼は、いつも父と一緒に飲んだくれているだけの只の酔っ払いでしかなかったから。好ましい印象などは持てる筈もなかったのである。
「言われてみれば、英子は勇輝とそんなに喋ってた訳でもないし、あっちの家に連れて行った覚えもないな・・・。まぁ、ともかく、だ。その優那ちゃんが我家と縁組して、戸籍上の家族になる。必要書類も今日しがた揃ってな。明日役所に提出しにいく予定だ」
そこまで話すと、光成は手元に置いていた缶ビールの封を開けて一口飲んだ。冷蔵庫から取り出してからしばらく時間が経っているため少し温くなっていて、彼は汗を掻いた缶を不満げに睨んだ。
「つまりだな。話を簡単にまとめると、中学生の女の子を明日からウチで預かることになったということだ」
「待て。本当に突然すぎて、お前の言葉を自体理解出来ても、状況の飲み込みというか、心の覚悟が追いつかないんだが」
「父親のことをお前呼ばわりしないでほしい。傷つくから」
「今日の今日でそれが決まったのかよ」
父親のメンタル事情など興味ないとばかりに、光成の懇願を無視し、彼を捲し立てる。
「いや、昨日の通夜の時にはそういった話は浮上してた。その時には既に、俺は立候補していたがな」
「そんな大事なこと、昨日の段階で電話ででも相談してくれれば良かったんだ」
「いや、まさか、俺も本当に了解が出るとは思わなかったんだ。考えてもみろよ。良識ある大人が、片親やってる俺に娘一人増やすって選択肢を与えると思うか」
「立候補したならそいつを止める奴はいないだろう。働けもしない子供の家族が増えるなんて経済的に大打撃だし、住み慣れた家に見ず知らずの子が増えるなんて、想像しただけで気まずいだろ」
「言葉遣いなんて今に始まった事じゃ無いだろうが。なに、まともな保護者ぶってんだ今更。おい、このロリコン」
「ロリコっ・・・、英子お前、何か勘違いをしていないか」
「何だよ、何が違うんだよ。幼女なんて単語を口にするような男は皆ロリコンだってのは、社会の常識だろう」
「お前、その幼女じゃないよ。戸籍上家族になるって意味の養女のことだぞ」
「はい? さっきから、ようじょ、ようじょ。うるせぇなぁ。日本語喋れよ。意味不明だぞ」
「だから、幼女じゃなくて、養・女、だ!」
「一緒じゃねーか、バカ野郎!」
怒れる少女はソファーに付属している正方形のクッション達と、序でに手に持っていたハンドスピナーを父へと投げつける。それらすべては、椅子に座って振り向く彼の側頭部に見事的中した。
「痛っ、いった! ゴメン、ごめんなさい! お願いだから物を投げないで! 分かったよ、ゴリラでも分かるように今から説明してやるから、こっちおいで!」
「てめぇ、今私のことをゴリラ扱いしやがったな。許さねぇ、私はあれ程図体デカくねぇよ。せめて、チンパンジーにしろっていつもいってんだろが!」
「だからボーダーライン低くない!? ゴリラとチンパンジーってほぼ同等だよね!」
過激なデモ活動が一段落すると、彼女は散らかったクッションやらには目もくれず、光成の施したとおりにダイニングテーブルの席に着いて説明を大人しく聞くことにした。
「俺がこの二日間どこに行ってたかは知ってるよな」
「勇輝叔父さんの奥さんの通夜と葬式だろ」
「そうだ。そこで、こんな話が出た。勇輝は行方不明になって半年経つし、妻である月埜さんも亡くなった今、娘である優那ちゃんの身元を誰か預かるべきじゃないかと。優那ちゃんもまだ中学二年生だ。一人暮らしをするには、少々若すぎる」
「待ってくれ、勇輝叔父さんに娘が居たなんて、私知らなかったぞ」
「え、嘘だろ。一度も顔合わせたことなかったか」
光成の弟である勇輝の一家は三年程前に光成の住むマンション近くに引っ越してきており、二人は互いの家へと頻繁に晩酌するのに赴いていた。
しかし、奇しくも英子自身は叔父である勇輝の自宅に押し掛けたことはなく、また、彼の妻である月埜やその娘であるらしい優那が自宅に遊びにくることも一度としてなかった。
英子は自宅に勇輝が来れば挨拶程度はしたし、温かいおつまみを作って振る舞いはしたが、積極的に関わり合いを持とうとはしなかった。だって彼女の中で彼は、いつも父と一緒に飲んだくれているだけの只の酔っ払いでしかなかったから。好ましい印象などは持てる筈もなかったのである。
「言われてみれば、英子は勇輝とそんなに喋ってた訳でもないし、あっちの家に連れて行った覚えもないな・・・。まぁ、ともかく、だ。その優那ちゃんが我家と縁組して、戸籍上の家族になる。必要書類も今日しがた揃ってな。明日役所に提出しにいく予定だ」
そこまで話すと、光成は手元に置いていた缶ビールの封を開けて一口飲んだ。冷蔵庫から取り出してからしばらく時間が経っているため少し温くなっていて、彼は汗を掻いた缶を不満げに睨んだ。
「つまりだな。話を簡単にまとめると、中学生の女の子を明日からウチで預かることになったということだ」
「待て。本当に突然すぎて、お前の言葉を自体理解出来ても、状況の飲み込みというか、心の覚悟が追いつかないんだが」
「父親のことをお前呼ばわりしないでほしい。傷つくから」
「今日の今日でそれが決まったのかよ」
父親のメンタル事情など興味ないとばかりに、光成の懇願を無視し、彼を捲し立てる。
「いや、昨日の通夜の時にはそういった話は浮上してた。その時には既に、俺は立候補していたがな」
「そんな大事なこと、昨日の段階で電話ででも相談してくれれば良かったんだ」
「いや、まさか、俺も本当に了解が出るとは思わなかったんだ。考えてもみろよ。良識ある大人が、片親やってる俺に娘一人増やすって選択肢を与えると思うか」
「立候補したならそいつを止める奴はいないだろう。働けもしない子供の家族が増えるなんて経済的に大打撃だし、住み慣れた家に見ず知らずの子が増えるなんて、想像しただけで気まずいだろ」
更新日:2017-07-21 18:53:42