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死にたくないけど
「あーもうなんか・・・消えてぇ」
放課後の教室。
いつもなんとなくかったるそうにしている生徒は
今日も憂鬱げにため息をついた。
「消える?」
友人が聞き返す。
こちらはこちらでどこか陰気な雰囲気があり、
そんなところが少し似ている二人だからこそ仲良くなったのかもしれない。
「死ぬの嫌だし、騒ぎになんのも嫌だし。
死にたいんじゃなくて、生まれたことを無かったことにしたい」
「うん・・・」
でも、と言いかけて、友人はやめた。
「これからもこうして、
特に面白みもなく生きてくってわけか・・・」
消えてぇ、とつぶやき、少年はまたため息をついて、
そのまま机に突っ伏した。
少し悲しげにその様子を見ていた友人は、
「・・・そんなに?」
と、遠慮がちに聞いた。
「んー。
まあお前といるときはまだ楽しいけど、
それ以外最悪だし」
軽く顔を上げて答える少年。
友人は少し考えるようなそぶりを見せ、
「できる、かもよ」
少し声を小さくして言った。
「なんだこりゃ」
友人の家に連れてこられ、少年は妙な装置を見せられた。
SFなんかで見る、記憶を操作したりとか、
あるいは洗脳を施したりとか、そういう風に使われる、
ヘルメット状の装置がついた椅子型の装置。
見た目はそんな感じだった。
「名前とかは無い、と思う。
僕の父さんが前研究してたやつ」
装置をいじりながら友人が説明する。
「本当はどういう風に使うやつだか知らないけど、
これは失敗作なんだって」
「へえ・・・」
「これを使うと・・・
どう言ったらいいのかな。
哲学ゾンビって知ってる?」
友人の質問に少年は首をかしげた。
「知らね。ゾンビ?」
「自我とかそういうのがなくて、
ただそれっぽい反応を返すだけ、みたいな・・・
要は感情も思考も無いけど、
あるみたいに振舞う、って感じかな。
簡単に言えば」
友人は装置から少年に視線を移して続けた。
「これを使うと、君はいなくなって、
君そっくりのロボットみたいなやつが代わりになってくれる。
僕以外に、誰もそれに気づかない」
「・・・」
「使って、みる?」
「・・・」
少年は考えた。
哲学ゾンビ。
自分は死んで、それは何も問題にはならない。
たぶん、苦しむことも無い。
自分が思い描いていた、消えることそのもの。
望んでいたことのはずだが、
いざとなってみると、なんだか怖い気がした。
「・・・明日」
少年は返事を先送りにすることにした。
「明日までに、決める」
決めるといっても、
装置を使うか決めるのではなく、
覚悟を決めるための時間。
「うん・・・わかった」
友人は寂しげに微笑んで答えた。
放課後の教室。
いつもなんとなくかったるそうにしている生徒は
今日も憂鬱げにため息をついた。
「消える?」
友人が聞き返す。
こちらはこちらでどこか陰気な雰囲気があり、
そんなところが少し似ている二人だからこそ仲良くなったのかもしれない。
「死ぬの嫌だし、騒ぎになんのも嫌だし。
死にたいんじゃなくて、生まれたことを無かったことにしたい」
「うん・・・」
でも、と言いかけて、友人はやめた。
「これからもこうして、
特に面白みもなく生きてくってわけか・・・」
消えてぇ、とつぶやき、少年はまたため息をついて、
そのまま机に突っ伏した。
少し悲しげにその様子を見ていた友人は、
「・・・そんなに?」
と、遠慮がちに聞いた。
「んー。
まあお前といるときはまだ楽しいけど、
それ以外最悪だし」
軽く顔を上げて答える少年。
友人は少し考えるようなそぶりを見せ、
「できる、かもよ」
少し声を小さくして言った。
「なんだこりゃ」
友人の家に連れてこられ、少年は妙な装置を見せられた。
SFなんかで見る、記憶を操作したりとか、
あるいは洗脳を施したりとか、そういう風に使われる、
ヘルメット状の装置がついた椅子型の装置。
見た目はそんな感じだった。
「名前とかは無い、と思う。
僕の父さんが前研究してたやつ」
装置をいじりながら友人が説明する。
「本当はどういう風に使うやつだか知らないけど、
これは失敗作なんだって」
「へえ・・・」
「これを使うと・・・
どう言ったらいいのかな。
哲学ゾンビって知ってる?」
友人の質問に少年は首をかしげた。
「知らね。ゾンビ?」
「自我とかそういうのがなくて、
ただそれっぽい反応を返すだけ、みたいな・・・
要は感情も思考も無いけど、
あるみたいに振舞う、って感じかな。
簡単に言えば」
友人は装置から少年に視線を移して続けた。
「これを使うと、君はいなくなって、
君そっくりのロボットみたいなやつが代わりになってくれる。
僕以外に、誰もそれに気づかない」
「・・・」
「使って、みる?」
「・・・」
少年は考えた。
哲学ゾンビ。
自分は死んで、それは何も問題にはならない。
たぶん、苦しむことも無い。
自分が思い描いていた、消えることそのもの。
望んでいたことのはずだが、
いざとなってみると、なんだか怖い気がした。
「・・・明日」
少年は返事を先送りにすることにした。
「明日までに、決める」
決めるといっても、
装置を使うか決めるのではなく、
覚悟を決めるための時間。
「うん・・・わかった」
友人は寂しげに微笑んで答えた。
更新日:2017-07-15 12:52:33