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女神4話「前方の敵後方の敵」

 女神隊員はテレストリアルガード基地内にいるときは、ウィッグだけで特徴的な単眼を隠してましたが、ここ数日はフルフェイスのヘルメットをかぶったままになってました。実はフルフェイスのヘルメットに新機能が付いたのです。それは翻訳機。これまでは言葉の翻訳機能が付いてましたが、新規に付いた翻訳機は文字の翻訳機です。このヘルメット越しに日本語や英語を読むと、女神隊員のよく知る文字に瞬時に翻訳されるのです。翻訳された文字はヘルメットのシールドの内側に映し出されるシステムになってました。
 この機能は女神隊員の世界を大きく広げました。もう毎日雑誌や新聞を読んでます。読んでる内容は自分の記事ばかり。批判的な記事も散見されますが、そんなのは無視して、ただひたすら自分を肯定してる記事ばかりを読んでました。フルフェイスのヘルメットのせいで見えないのですが、そのときの女神隊員の顔は、かなりニコニコしてると思います。
 そのうち女神隊員はインターネットを見るようになり、ネット通販にも興味を持つようになりました。いつも使ってる白い帽子に飽きたのか、他の巨大なつばの帽子を探してるようです。
 しかし、せっかく見られるようになったネット通販サイトですが、女神隊員はそれを買うことができません。懲罰的な意味合いをこめて、最初の6か月分の給料は、全部じょんのび家族に進呈することにしたからです。女神隊員は今更「あんな約束するんじゃなかった」と悔やんでました。
 ある日海老名隊員が後ろからそーっと女神隊員がやってるインターネットを見たら、そこはアニメのコスプレの衣装を販売するホームページでした。女神隊員が気になってる帽子は、こ○す○のめ○みんの帽子とす○○かのク○リの帽子でした。リアル中2で重度な中二病患者の海老名隊員は、なんかうれしくなっちゃいました。
 なお、テレストリアルガードは正式発表してないのですが、ネットの世界では女神隊員は宇宙難民船唯一の生き残りで、しかも単眼だということがなんとなくバレてるようです。

 その日はふつーの日でした。晴天の午前中、テレストリアルガードのオペレーションルームには上溝隊員がいます。一応レーダーのスコープを見てますが、今まで第一にこのスコープに未確認飛行物体が映ったことはありません。ちなみに、女神隊員が乗ってきた宇宙船の墜落時は、スペースステーションJ1からの通報で知りました。そんなわけで、上溝隊員はのんびりと雑誌を読んでます。
 オペレーションルームの隣室のサブオペレーションルームには隊長、橋本隊員、倉見隊員、寒川隊員、女神隊員がいます。なお、オペレーションルームとサブオペレーションルームの間の扉は常時開いてるので、実質1つの部屋です。
 隊長はいつものように録画しておいた深夜アニメを見ています。橋本隊員はパチンコと競馬で泥沼にはまってしまった反省から、今は将棋に興味を移そうとしています。そんなわけで今は、本を片手に詰将棋をやってました。倉見隊員と寒川隊員はそれぞれノートパソコンでインターネットをしてます。女神隊員もヘルメットをかぶってインターネットをしてました。
 こんな怠惰な日常を破壊する事象が突然起きました。緊急アラームが突然鳴ったのです。上溝隊員は慌ててレーダースコープを見ました。それ以外の隊員は上溝隊員に注目しました。レーダースコープを見てた上溝隊員が、大きな声で発言しました。
「四次元レーダーに反応です! たった今未確認飛行物体が大気圏内に突入しました!」
 これに隊長が反応しました。
「他のレーダーは反応してないのか?」
「はい!」
 橋本隊員が隊長に話しかけました。
「四次元レーダーだけに反応してるってことは、認識ステルス機能がついた飛行物体?」
「ああ、そうだろうなあ・・・」
 隊長は命令モードになりました。
「よし、全員出動だ!」
「はい!」

 青空の下、カマボコ型の格納庫からストーク号が、さらに続けて同じ格納庫からもう1機のストーク号が出てきました。
 先頭のストーク号のコックピット。ここには隊長と寒川隊員、後部補助席には女神隊員が乗ってます。寒川隊員は横目で後方を見て、
「橋本さんたちもストーク号ですか?」
 それに隊長が応えました。
「ヘロン号には四次元レーダーは装着してないからな」
「それでストーク号ですか」
 2機のストーク号が浮上。コックピット内の隊長の命令です。
「ジャンプ!」
 それに寒川隊員が応えました。
「了解!」
 もう1機のストーク号のコックピットの橋本隊員も応えました。
「了解!」
 2機のストーク号がふっと消えました。

更新日:2017-10-26 19:03:14

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