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【視点:三田市のとある図書館司書】



 そういえばあのバンパイア…名前はなんて言うんだっけ?今度従魔に聞いてみよう。あれだけの実力を持っているんだ。僕の情報網にかかっていないわけがない。面白そうな奴らは全員チャック済みだからね。

「面白いことになってきたな~」

 心の底から無邪気に呟く。

 WCDにバンパイア、それとパンドラの一族の生き残りとこの僕。偶然とはいえ、これだけの役者が揃ったんだ。何も起こりませんでしたっていうのはちょっともったいないよね。

(手始めにあの女けしかけてみるか?)

 あの家で唯一リンが無意識下に情を寄せているあの女を弄ったらリンはどんな反応をするだろうか?怒る?悲しむ?それとも悦ぶ?フフフ……あぁ、どの反応を見せてもあの子ならきっと素敵な舞台を披露してくれるに違いない。既に自らの能力を表面化に見せているのだから、ちょっとした弾みで存分にそれを振るってくれることだろう。あのクソガキがこれからを期待している『喧嘩屋』も近くにいることだし、今僕の頭の中で描きつつある筋書き通りに事が運べば、七年前のちょっとした憂さ晴らしにもなるだろう。まぁ、あれはあれで面白い結果になったし、クソガキの心労が逆に増えたくらいだから正直あまり気にしてないんだけどね。でもむかついたのは本当だから別にいいか。

 鼻歌でも歌い出しそうな高揚した気分で書棚に本を戻していると、慣れていることもあってあっという間に仕事が終わってしまった。普段なら今日はリンも来ないだろうし、特に何も面白そうなことが起こりそうにもないと溜め息を吐きたくなるところだけど、今日は違う。これからしばらくはやることが山ほどある。まずはきちんとした台本(シナリオ)を作らなくちゃいけないし、その出来具合によっては下準備に数年単位で時間がかかってしまうかもしれない。でもその間にあのバンパイアがいなくなってしまったらいけないからスケジュールはきちんと調整しなければいけない。今近くに侍らせている僕の従魔では大した役には立たないだろうなぁ……。余計な手を出せば、おそらく勘付かれる。『喧嘩屋』も何か野生の勘が鋭そうだったけれど、それ以上にあのバンパイアには注意しなくちゃいけない。あれは並大抵の実力じゃない。

 ははっ、こんなやりがいのありそうな出来事はほんっとーに久しぶりだ。だからこそ絶対に失敗は許されない。

 さぁ、そうとくれば早速ショーの準備を始めるとしますか。

 待っていてね、リン。ぼくが色褪せることのない夢のような世界(ぶたい)を君にプレゼントしてあげるから。存分に舞い踊るといいよ。

更新日:2018-05-27 19:10:16

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