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~変な者拾っちゃった。どうするよ、これ?~
「生物図鑑~新生種編~」
デビルドラゴン
ドラゴンの中でも最強最悪の種とされている。
形態は四足歩行の翼竜型。
種全体ととして既に|BL《ブラックリスト》・Lv2に登録されており、新生種の中では最強ランクの生命体である。成体にもなれば稀に|BL《ブラックリスト》・Lv3以上に登録されることもある。
ごく最近、NSD内でレッドドラゴンやブルードラゴンなどを主とした|DR《ドラゴンライダー》部隊が設立された際にはその強さからデビルドラゴンの編成も考慮されたが、生来の狂暴な性格により断念。
大きさは卵:全長約50㎝。第一形態:約1~3m。第二形態:約3~10m。第三形態:約11~30m。以降は詳細不明。
表面温度は約40度と人間よりも少し高い程度。だが体内温度は100度以上と非常に高温。
全身を覆うエメラルドグリーンの鱗は非常に硬質なため、大砲やその他のごく一般的に使用されている銃器などはほとんど通用しない。
口から吐き出される熱ブレスは炎よりも高温で、一瞬で鉄を溶かすほどである。
飛行速度はドラゴン最速で、持久力も高く、一日で最高1000㎞以上を軽く上回る距離を飛んだという記録もある。――――――――――
* * * * * *
【視点:リン・ダン】
トントン、と指先で肩をつつかれ、ハッとして貪るようにして読み漁っていた手元の本から顔を上げると、背後に立つ顔見知りの図書館員が微笑みを浮かべながら既に閉館の時間が間近であることを告げた。
確かに、窓ガラス越しに外を見てみると、もう日が暮れ始めている。本に夢中になるあまり、時間の経過に気が付かなかった。
「じゃあね」
そう言って屈託のない微笑みを向けてから仕事へと戻っていくその人の背中を無言のまま見送った後、わたしは本を棚に戻しに向かうべく、座っていたソファーから立ち上がった。
(カッケーなー……)
見開きにいっぱいいっぱいに描かれた艶やかなエメラルドグリーンの鱗を身に纏う、写真越しからでも伝わってくるドラゴンの勇壮さに魅入りながら、わたしは密かに溜め息を吐く。
一度でいいから、生のドラゴンをこの目で見てみたい。触れてみたい。
誰にも打ち明けることのない、この激しい願望にまるで身を焦がされているようだ。
(いつか絶対、ここを出て行くんだ……)
もっと広い世界に出て、本物のドラゴンを見るんだ。
飽きるほど何回も繰り返し読んだこの図鑑に載ったドラゴンを見るたびに決意するも、残念ながら、ドラゴンは一般人がそう容易く飼い慣らせるような生易しい生き物ではない。世界中でドラゴンの保有に成功しているのはWCDや六芒星連合など軍事力強化に力を入れているとこの軍隊くらいのものだ。いくら六芒星連合に所属している日本に住んでいるといえど、こんなド田舎でドラゴンを飼育しているわけもなく、まだ小学生の身空であるわたしは、諦めと羨望の入り混じったため息を吐くことで我慢するよりほかなかった。
はぁ、と己の無力さに再度物憂げなため息をつく。
毎晩のように繰り返し見ている夢のおかげで自分がどれほどちっぽけで、どれほど世界は広いのかは嫌というほど理解している。だからこそこんなど田舎に閉じ込められ、「保護」の代償に半強制的にあらゆる自由を奪われることを是とし、あまつさえそれが当たり前のように享受している同年代の者たちのことが理解できなかった。
それがこの世界の在り方だとしても。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
本棚の影から突如目の前に現れた人影に反応できず、衝撃で手に持っていた本がバサリと音を立てて床に落ちる。
「ご、ごめんなさい!」
聞き覚えのある、空気と同化しそうなほど頼りなく、哀れっぽい声音で謝罪をしながら、目の前の人物が慌てて床に落ちた本を拾い、床に視線を張り付けたままわたしに手渡した。
「あ……」
「へ?……えっ!?ダ、ダンさん!?」
予想だにしていなかった遭遇にわたし自身も軽く驚きはしたが、目の前に立つエバンネはそれ以上に目をまん丸くさせ、声を張り上げた。つーか、名乗った覚えないのに、なんでわたしの名前知ってんだ?クラスの誰かから聞いたのか?
「どうしてここに!?」
「別にこの町に住んでんだから、居てもおかしくないだろ?」
「あ、そか……」
デビルドラゴン
ドラゴンの中でも最強最悪の種とされている。
形態は四足歩行の翼竜型。
種全体ととして既に|BL《ブラックリスト》・Lv2に登録されており、新生種の中では最強ランクの生命体である。成体にもなれば稀に|BL《ブラックリスト》・Lv3以上に登録されることもある。
ごく最近、NSD内でレッドドラゴンやブルードラゴンなどを主とした|DR《ドラゴンライダー》部隊が設立された際にはその強さからデビルドラゴンの編成も考慮されたが、生来の狂暴な性格により断念。
大きさは卵:全長約50㎝。第一形態:約1~3m。第二形態:約3~10m。第三形態:約11~30m。以降は詳細不明。
表面温度は約40度と人間よりも少し高い程度。だが体内温度は100度以上と非常に高温。
全身を覆うエメラルドグリーンの鱗は非常に硬質なため、大砲やその他のごく一般的に使用されている銃器などはほとんど通用しない。
口から吐き出される熱ブレスは炎よりも高温で、一瞬で鉄を溶かすほどである。
飛行速度はドラゴン最速で、持久力も高く、一日で最高1000㎞以上を軽く上回る距離を飛んだという記録もある。――――――――――
* * * * * *
【視点:リン・ダン】
トントン、と指先で肩をつつかれ、ハッとして貪るようにして読み漁っていた手元の本から顔を上げると、背後に立つ顔見知りの図書館員が微笑みを浮かべながら既に閉館の時間が間近であることを告げた。
確かに、窓ガラス越しに外を見てみると、もう日が暮れ始めている。本に夢中になるあまり、時間の経過に気が付かなかった。
「じゃあね」
そう言って屈託のない微笑みを向けてから仕事へと戻っていくその人の背中を無言のまま見送った後、わたしは本を棚に戻しに向かうべく、座っていたソファーから立ち上がった。
(カッケーなー……)
見開きにいっぱいいっぱいに描かれた艶やかなエメラルドグリーンの鱗を身に纏う、写真越しからでも伝わってくるドラゴンの勇壮さに魅入りながら、わたしは密かに溜め息を吐く。
一度でいいから、生のドラゴンをこの目で見てみたい。触れてみたい。
誰にも打ち明けることのない、この激しい願望にまるで身を焦がされているようだ。
(いつか絶対、ここを出て行くんだ……)
もっと広い世界に出て、本物のドラゴンを見るんだ。
飽きるほど何回も繰り返し読んだこの図鑑に載ったドラゴンを見るたびに決意するも、残念ながら、ドラゴンは一般人がそう容易く飼い慣らせるような生易しい生き物ではない。世界中でドラゴンの保有に成功しているのはWCDや六芒星連合など軍事力強化に力を入れているとこの軍隊くらいのものだ。いくら六芒星連合に所属している日本に住んでいるといえど、こんなド田舎でドラゴンを飼育しているわけもなく、まだ小学生の身空であるわたしは、諦めと羨望の入り混じったため息を吐くことで我慢するよりほかなかった。
はぁ、と己の無力さに再度物憂げなため息をつく。
毎晩のように繰り返し見ている夢のおかげで自分がどれほどちっぽけで、どれほど世界は広いのかは嫌というほど理解している。だからこそこんなど田舎に閉じ込められ、「保護」の代償に半強制的にあらゆる自由を奪われることを是とし、あまつさえそれが当たり前のように享受している同年代の者たちのことが理解できなかった。
それがこの世界の在り方だとしても。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
本棚の影から突如目の前に現れた人影に反応できず、衝撃で手に持っていた本がバサリと音を立てて床に落ちる。
「ご、ごめんなさい!」
聞き覚えのある、空気と同化しそうなほど頼りなく、哀れっぽい声音で謝罪をしながら、目の前の人物が慌てて床に落ちた本を拾い、床に視線を張り付けたままわたしに手渡した。
「あ……」
「へ?……えっ!?ダ、ダンさん!?」
予想だにしていなかった遭遇にわたし自身も軽く驚きはしたが、目の前に立つエバンネはそれ以上に目をまん丸くさせ、声を張り上げた。つーか、名乗った覚えないのに、なんでわたしの名前知ってんだ?クラスの誰かから聞いたのか?
「どうしてここに!?」
「別にこの町に住んでんだから、居てもおかしくないだろ?」
「あ、そか……」
更新日:2018-05-27 19:00:20