• 34 / 82 ページ
【視点:ザイル・シャノン】



 俺が内心で悲しみの涙《しずく》を滝のように流していると、酷く慌てた様子で部下の一人が部屋に飛び込んで来た。

「も、申し訳ありません!早急に報告することが……!」
「とりあえず、一端落ち着いてください。一体何があったんですか?」
「っ……申し訳…ございません……!」

 動揺する部下をなだめつつ、落ち着いた態度を崩さないホルムの姿に影響を受けたのか、先程まで怒涛の勢いで話し出そうとしていた兵士は、途端に口を噤んだ。
 その様子じゃあ、少なくともいい報告は聞けそうにねぇな。 

「どうしたんです?」
「……っ……」

 部下の様子に嫌な予感が俺たちの脳裏を過ぎり、ホルムが先を促すが、よほど口にしづらいことなのか、冷や汗をだらだらと滝のように流している兵士は形ばかりの敬礼をしたまま口を開かない。

「おい、黙ってちゃ分かんねぇぞ?」

 辛抱強く相手の返答を待つホルムとは対照に、先にしびれを切らした俺が先を促す。
 俺の苛立った声音に、ようやく兵士は怯えの色をさらに濃くした震える唇を動かして、次のように告げた。

「あの幼女が……逃げだしました!」

 うあちゃー、何やっちゃってんのー!?
 上から怒られんの俺だってこと分かってんのか、バカヤロー!!

更新日:2018-05-27 18:59:39

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

パンドラボックス~幼少期編~