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第対話

 組織の名前は、『覗く者(イルミナティ)』。
その組織の目的は、一言で言うならばばこの世界にあるありとあらゆる概念を覆そうとしているということだ。
それ以上は全て謎に包まれている。
組織の大きさも、人数も、影響力も何一つ分からない形無き集団だ。
何ならば、組織の末端でも一般人を巻き込んで何十人もの人を、人から悪魔にする実験をするようなところだ。その目的の真意すら掴むことができていないのが現状だ。
あまりにも全てが秘匿され過ぎていて僕らでは調査すらできない。
僕らからしたらそれこそこの組織は組織というより思想や概念に近い。
雲を掴むような話だ。
止めようのない。
けど僕は犬山士宮のこともあってこの組織の活動を停止させたい。
これ以上、先の事件の蛇女(ラミア)のような人たちを生み出してはいけない。
高天原のためにも、僕はそう密かに誓った。
僕は、僕のような人間が悪魔の手ではなく、人の手で造り出されているというこの現状が何よりも気に入らなかった。
気に入らない、それは人のやることじゃない。人道から外れたことだ。
だが、できるのか。
矮小なこの僕にこの組織を壊滅させることができるのか。
誰も尻尾すら掴め無いこの組織の実態に。
否、やらなくちゃいけないんだ。
例え、僕以外でもできることであっても。
僕がやるべきことでは無かったとしても。
やりきらないと、僕が僕を許せなくなってしまう。
それが彼女との約束にも繫がるはずだ。僕はそう信じている。
「半悪魔と陰陽師と相反する身で共存する貴方たちなら。」と犬山は言っていた。
彼が僕らの存在を知るために、何を経緯として知ったのだろうか。
僕らのことはあまり知れ渡っていないはずだ。
高天原についても陰陽師の組織の方に僕のことは報告していないと言っていた。
つまり、不可侵の領域ということだ。
お互い誰かにこの関係を教えることは禁則事項としている。
彼女が、高天原が僕を裏切るわけがない。
とにかくだ、相手の手が読めない。
名前の通り、この世の全てを見通すことでもできるというのか『覗く者(イルミナティ)』は。
形の分からない組織だ。次のどういう手が出てくるのか読めない。
何はともあれ、しばらく警戒は必要だろう。
僕らにどういう需要があるかどうかは分からないけど、暗躍する彼らのことだ。
警戒するに越したことはない筈だ。
僕は、僕らの日常を護るために。
何者かも分からない組織を相手に、僕は戦ってやろうと思う。

更新日:2017-08-21 03:11:23

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