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小説

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Ⅹ 水辺の紅い薔薇 ~ チャイコフスキー「バルカローレ」

挿絵 800*601




伯林の秋の訪れは早い。
ウンター・デン・リンデンの菩提樹の葉が色づいてきた。

夕暮れ、グランドピアノのこぼれるような粒の音色が居間に響く。
ユリウスがショパンのエチュードを弾いている。

先週、注文していたグランドピアノが届いた。
ダーヴィトたちが伯林を発った日の午後、ベヒシュタインの店にユリウスを連れて行った。
ベヒシュタインは、伯林を地元とするピアノメーカーである。ハンス・フォン・ビューローやフランツ・リストが絶賛したことで有名であり、帝政時代はドイツ帝室御用達でもあった。

ユリウスが試弾をすると、透明感のある音色が際立つ。
「音の立ち上がりが他のピアノとは違うんだよね。ちょっと独特のくせがあって、でもとてもいい音だね。」

ユリウスも気に入ったようだ。
早速、奥行き2メートルほどのグランドピアノを注文した。
それが先週届いた。

おれは、ソファでウォッカのグラスを傾ける。

着任したばかりの外交官は忙しい。今日も、会議や面談で日程が立て込んでいた。
夕食前、ユリウスのピアノを聴きながら過ごす時間は、心安らぐ貴重な時間だ。


更新日:2018-10-01 00:12:28

もうひとつの伯林(ベルリン)オルフェウスの窓ss Op.6