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朝と夜

世界が出来たばかりの頃、
朝と夜が生まれました。
二人は交代で世界を包むことになりました。
朝は輝きをもって、夜は静けさをもって。
そんな二人は世界を愛していました。
世界には子供たちが少しずつ増えて行き、
彼らはそれぞれ朝と夜を愛しました。
が、その中で夜を愛したのは
嫌われ者のムカデやらコウモリやらばかり。
朝はずっと一緒の夜が
そんな連中にしか愛されないのが不満でした。
けれど、当の夜は彼らを特に愛しました。
あるとき朝が言いました。
「君は僕と対等なものなんだ。
 君もあんな連中じゃなくて
 もっといいものと付き合うようにすればいい」
「でも、彼らは私を求めているから」
夜は困ったように微笑みました。
「それに、彼らはそこまで悪いものじゃないよ。
 君は彼らの何が嫌いなの」
「そりゃあ、ね」
朝はそれ以上続けませんでした。

やがて世界に人間が生まれました。
人間はどんどん育ち、彼らもまた朝を愛しました。
それだけならまだよかったのですが、彼らは夜を恐れ、
しまいには夜を悪者に仕立て上げてしまいました。
「あんな連中と付き合っているから
 そんなことを言われるんだ」
朝は夜に忠告しました。
「君だって不気味なものなんかじゃなく、
 僕と同じ・・・いや、
 僕よりずっと神秘的なものなのに」
「君が輝かしいものであるなら、
 私は神秘になる必要はないよ」
夜は穏やかでした。
「信じて愛するものは一つあれば足りるでしょう」
そう言われても朝はやっぱり納得がいきませんでした。

更新日:2017-06-13 17:34:14

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