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珈琲騒ぎ

3月23日 快晴

 冬の間うとうと眠っていることが多かったフェレットでしたが、ようやく春になって起きている時間も長くなってきました。
 しかし、まだまだ寝ぼけ眼で仕事をしてることが多いので、アッカーマンは目を覚ます効果があるというコーヒーを飲ませてみることにしました。

 コーヒー豆は、「豊作の角」といういろんな食べ物を出す魔法の角からコーヒーの木の植木鉢が現れるので、その実からとります。
 あらかじめ赤い果肉を取り除いて、洗って、干して、その上にフライパンで焦げてはぜるまで炒った物でした。

 豆挽き器につやつやと黒光りするコーヒー豆を入れてハンドルを回すと、香ばしいいい香りがあふれてきました。
 それが終わると蒸気式コーヒーメーカーの準備です。
 一番下のアルコールランプに燃料が入ってるのを確かめると、五徳の上に乗っている装置を分解し始めました。
 寸胴な水タンクに二杯分の水を注ぎ、漏斗型の金属の器を取り上げます。
 中に小さな穴がたくさん開いた仕切りがついていて、そこに細かく引いたコーヒーの粉をぎゅっぎゅと詰めます。

「おっちゃんまだー?」
 待ちきれなくなったフェレットさんが催促します。
 準備の様子が楽しいのか、わくわくするようにしっぽがパタパタと左右に揺れていました。
「まーだー。上手いもん作るのは手間がかかるんだよ。クッキーでも食って待ってろ。」
 買い置きのクッキー缶を開けて食べさせながら、なおも準備を続けます。
 
 漏斗型の容器を水タンクに組み合わせて、その上にコーヒーメーカーの上の部分の容器をねじ込みます。
 上の器には、真ん中の筒を通って濾過されたコーヒーが出てくる仕組みです。 
 下に仕掛けたランプに火をつけると、あとは沸騰の音が小さくなるまで待つだけ。

 男はいつも座っている椅子に腰を下ろし、読みかけの古い錬金術の本を栞をはさんだ所から読み始めました。
 ケリーは暇だったので、おっちゃんの膝の上によじ登ってみます。
 アッカーマンは読書しながら、適当にフェレットを撫でたり尻尾をつかんで遊んでやります。
 ほどほどの力加減でないと噛み付かれるので要注意。

 やがてコーヒーメーカーはかぽかぽと音を立てて沸騰し、コーヒーのいい香りが官邸に満ちてきました。
 おっちゃんはフェレットを首長椅子に乗せると、コーヒーメーカーのランプに陶器の蓋をして火を消します。
 ぽってりとした白い陶器のカップに注ぎ分けます。
 
「ほらできたぞ。飲め。」
「いただきもーきゅ・・・にがー!」
 ケリーは一口飲んでぴょんと飛び上がりました。  
 アッカーマンもコーヒーを口にしてみますが、豊かな香りとさらりとした苦味が舌に広がります。
 どうやら人間にはちょうどよくても、フェレットの口には苦味が強すぎるようです。
「子供舌かよ。これくらいがちょうどいいんだよ。薬だと思って飲め飲め、目が覚めてちっとはしゃきっとするぞ。」
「もきゅー・・・。」

 そういわれてフェレットさんは仕方なくコーヒーをすすります。
 一口ごとに苦い!とかもぎゃー!とにぎやかでしたが、カップの中身が半分になる頃には、だんだんと様子がおかしくなってきました。
 うろうろとと落ち着きがなくなり、きゃーきゃーと叫びだします。
 さすがに心配になって、おっちゃんも声をかけます。
「お、おい、大丈夫か?」
「らいじょーぶ!にあいけど、おいしーね、こえ!」
 なんだか飲みすぎの酔っ払いのような有様です。
 どうやら小動物にコーヒーは禁物だったようです。
「ふあふあすゆー、かららほかほかー。ちょと運河の風にあたてくゆー。」
 ケリーはよたよたふらふらと、首長専用の小さな扉からでていきます。
 大丈夫か、と思いつつも、コーヒーメーカーの後片付けをしていると、「もぎゃーーー!!」と素っ頓狂な悲鳴が東の運河から聞こえてきました。

更新日:2017-06-13 12:25:17

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