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脱走計画

11月15日晴れ時々雨

 最近アッカーマンは憂鬱でした。
 雑事に終われる毎日にふと自分は何をやってるんだろうと、我に返ることがあります。
 好き放題錬金術の実験ができること以外、あまり楽しみがないのです。 
(その実験素材の代金が、とっても高いということは気にしてないようですが!)
 商人連合への支払いが終わってないためお金は相変わらず持たせてもらえませんしね。
 もう納得するだけ働いただろうと思うのですが、どれだけ借金が残っているか教えてもらえません。
 なので、誰にも知られない場所へこっそり行ってしまおうと思い立ったのでした。

 小金をこつこつと貯め、もうすぐ目的額に達成しそうな頃のことです。
 いつものように暖炉のレンガをはずして中に隠した壷に金貨を追加しているのを、黒い子熊が窓からこっそり見ていました。
 アッカーマンがよからぬことを考えてるときの顔でにんまりとしている様子を見て、おっちゃんの動向に用心することに決めました。
 するとおっちゃんが新しい地図を手に入れたり、旅のための寝袋を壷の金貨で買ってるのを知りました。
 首長の予定表に長期の旅をする予定なんてまったくありません。
 これは近々脱走するクマ!と察したモエギは、鍛冶師をしている人間の友達に相談しました。
 人間の少女はすぐにある道具を作り上げて、モエギに手渡したのでした。

 次の日の朝のことです。
 アッカーマンが下宿している宿屋に、彼の悲痛なわめき声が響き渡りました。
「ちょ・・・はずせーーーーー!?」
 おっちゃんが実験に疲れてぐっすりと寝ている間に、なんと左の足首へがっちりと金属の枷がはめられてしまったのです。
 しかも、枷につながった鎖は寝台の脚に幾重にも巻きつけられていました。
 がちゃがちゃと引っ張ってゆるむわけもなく、鍵穴にロックピックをつっこんでもまったく外れる様子もありません。
 なにせ伝説レベルの腕前の鍛冶師が丹精こめて細工した枷です。
 素人同然の鍵開け技しか持たないおっちゃんには、決してはずせない物でした。
「だ、誰か!助けてくれー!」
 おっちゃんが助けを呼ぶ声を扉越しに聞きながら、モエギがつぶやきます。
「いい仕事したクマー。」
 子熊は廊下に座り込んで、満足そうにおやつの蜂蜜の壷を抱えてなめていました。
 
 こうしてアッカーマンの脱走計画は未然に防がれました。
 やがて叫び声を聞きつけた宿の人たちから首長へ連絡が行き、それは商人連合の知るところとなりました。
 なんとか足枷ははずしてもらえましたが、ギルド統括のマダムルシンダにぎっちり叱られたおっちゃんは小金も取り上げられて借金の足しにされてしまいました。
 いまもがっくりとしながら首長の雑務に追われる日々をすごしています。

 そう、今日もベスパーは黒い小熊の活躍で平和です・・・。

更新日:2017-06-13 12:17:09

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