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葛の葉狐

「恋しくば たずね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」

安倍晴明の母・白狐の葛の葉が歌った詩

摂津国安倍野(せっつのくにあべの)にある、信太森にある葛葉稲荷(くずのはいなり)

猟師に追われていた白狐を助け怪我をした一人の人間の男・安倍保名(あべのやすな)

そんな保名の元へ、葛の葉という名の美女が現れ保名を介抱して家まで送った

そして、葛の葉が毎日、保名を見舞ううちに二人は恋仲となる

二人の間に生まれたのは『童子丸』という

しかし、葛の葉は幼い童子丸に狐の正体を見られ、涙を零し「もう一緒には暮らせない」と言い障子に別れの歌を書いて森へと帰って行った

『恋しくば たずね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉』

葛の葉「今では童子丸は安倍晴明という名で都で陰陽師を生業としておりますわ」

黒鵺「オレ達も危うく調伏されるところだったよな、蔵馬」

蔵馬「ああ…手強いな、葛の葉の息子は」

葛の葉「うふふ…、お二人共、息子に会った時にはお気を付け下さいな」

今、蔵馬と黒鵺は信太の森の葛の葉の処に来ている

麗しい女狐・葛の葉は人間との恋に身を焦がした

蔵馬には、どうにも情を傾けられない

人間なんかの、どこがいい…?

蔵馬がそう思っている頃、黒鵺がつい最近の出来事を葛の葉に軽快に話していた

黒鵺「蔵馬の奴、不老長寿の秘薬・人魚の肉を食べて、オレは食べそこねちゃってな ずりぃよなぁ」

蔵馬「あれは、風鬼の奴が誰かとケンカしていて、その風で黒鵺の分が飛ばされたから…!」

葛の葉「あら、まぁ、そうなの?」

黒鵺「ああ」

蔵馬「黒鵺は運が悪かったんだ」

葛の葉「ふふふ…お二方、とても楽しい方達ね」

葛の葉は、ころころと笑う

美女の笑顔に黒鵺は満足して蔵馬と共に去って行った

都へ━━━

(続く)

更新日:2019-06-16 18:14:20

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