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第2章 「練習試合」

「それでは、両チーム準備はいいですね?魔法陣へ全員入ってください」


立会いの教師は、風間とDチームの担当教師である笹木だ。
全員が言われた通りに魔法陣の中に入ると、起動の音と共に魔法陣が光り始めた。フワリと風が巻き起こり、視界が白く染まっていく。隼人は目を閉じ、グッと刀を握り締めた。

目を開けると、そこは大量の学習机が積もる空間だった。一瞬この場の状況が理解できずパチパチと目を瞬く。
空は赤く染まり、閉じられた空間だとは思えないほど高く広がっている。
前を見ると、百メートルもなかったはずの相手チームとの距離が、途方もなく伸びていた。


「これは…?」

《聞こえますか?空間魔法は正しく起動しました。皆さんの戦場はそこです。勝利条件は相手チームの旗を折る事。制限時間はありません。それでは、試合を始めてください》


え、と思う間にアナウンス替わりの通信魔法は切れていた。
慌てて改めて戦場を見渡す。
やはり、不規則に投棄された机の地面だ。


「こんな足場が悪い場所でやるって!?」

「初っ端から想定外だな…。だが作戦は変わらない!如月さん!領域を展開してくれ!防衛部隊は保護魔法を!黒魔法部隊は中衛と前衛に分かれて!岡崎さん、俺達も行くぞ!」


隼人が咄嗟に指示を出すと、気を取り直したように全員が位置につき、詠唱を開始した。

隼人は岡崎と合流し、まずは相手チームの状況を確認する。
相手もこちらと大差は無いようで、すぐに配置についていた。予想通り、錬金術師の大半が近接武器を構えて此方を伺っている。

数分後。隼人は覚悟を決めると、振り向いた。後ろを向くのは、きっとこれが最後だ。


「黒田!準備は!?」

「いつでもいいわ!」

「行くぞ!攻撃部隊、撃て!!!」


隼人の合図と同時に、様々な魔法が前方へと飛び出した。向こうもほぼ同時に魔法を撃ったらしく、空中でそれらが激突する。激しく飛び散る閃光が、赤い空に舞い散った。

相手の前線が動き出す。錬金術師達が武器を手に、此方へと走り出したのが見えた。きた、と。隼人は腹に力を込める。


「中衛部隊!敵が来るぞ!」

「わかってるわ!」

「任せろ〜!!」


佐江塚と東が応える。だがそれもすぐに詠唱の声でかき消された。次々と攻撃魔法が放たれ、前線へと向かっていく。

敵の前線と、中衛の黒魔法がぶつかった。

激しい金属音と爆発音が響く。弾幕が一瞬にして視界を遮った。
隼人はじっとその煙の壁を見つめる。
突破口を探さなければならない。敵の人数が少なく、突撃に支障のない場所。ふと、煙の一点に隼人の視線がとまった。

あそこだ。

確信すると同時に、声を張り上げる。


「木村!!中央から右に26度だ!!俺達が出た5秒後に撃ってくれ!!」

「了解した!!」

「岡崎さん、行くぞ!」

「はい」


合図をして、飛び出した。刀を鞘ごと握り締めて走る。
が、隼人より一瞬遅れて走り出したはずの岡崎が息もつかぬ間に全方へと進み出た。揺れる黒髪が、弾ける閃光を受けて煌めく。


「ちょっ、岡崎さん速!?」

「来ますよ、小野村殿!」


きっかり5秒後。指定した通りのところへと、青く輝く球体が直撃した。
煙がそこだけ晴れる。狙い通り、殆ど人がいなかった。


「くそ!敵だ!」

「ここを抜かせるな!!」


相手のチームの怒号が聞こえる。慌てて此方の動きを止めようとする生徒の攻撃を、岡崎と二人で跳ね除けた。
走る足を、止めはしない。前を見据えると、立ちはだかる敵の多さに重圧を感じた。


「小野村殿、このままいくと、あと数秒で銃撃と魔法が来ます!」

「岡崎はこのまま突っ込め!」


指示を出すと、隼人は胸元から魔石を取り出した。そして指先で素早くそれを起動させ、岡崎の背中へと投げつける。
途端、岡崎の姿が消えた。隼人はそれを確認すると、わざとスピードを落として迂回する。すると予想通り、防護壁の向こうの魔法陣達が此方へ向いたのが見えた。

数秒だ、先程標的を失った事で相手が躊躇ったその数秒。それが、隼人に許された時間。


(無駄にはしない!)



隼人は刀を抜いた。



更新日:2017-05-13 00:36:54

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