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 不意に聞き慣れた言葉が自分の口から零れだす。
 あぁ、そうだ。わたしはまだ答えてすらいない。
 ゆらり、と勇者が立ち上がる。そこに快活な少女の姿はなく、その瞳はどこか遠い場所を見つめているようだった。
 その口から、まるで何かを祈るように朗々と言葉が溢れ出してくる。
「第二・第三の『わたし』がいずれ現れることだろう……」
 その瞳に、その声音に、その姿に。かつて『勇者』と呼ばれた少女の面影はなく。
 ただそこには――
「ヴェロニカ」
「……なんでしょう、『魔王』」
 ヴェロニカも彼女の意志を、彼女の『応え』を察したのだろう、恭しく頭を垂れると次の言葉を待った。
 きっと、ここには見えぬ場所でも、何かを感じ取った魔物達が頭を垂れていることだろう。
 そして、彼女は――『勇者』と謳われた少女は告げる。
 世界の終わりを。
 新たな始まりを。

「さぁ、始めるぞ、悪逆の限りを」

 かくして。
 かくして、ここに新たな『魔王』が誕生した。
 その頬を濡らす涙を隠して。

更新日:2017-04-15 23:05:02

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