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魔王はバグに冒されて
1
「――これで終わりだ、魔王!」
どこか重々しさすら感じる城内に凛とした声が響き渡る。
そしてその声に劣らぬ研ぎ澄まされた一閃が、遂にこの城の主を捉えた。
「ぐ、ぉぉおおお――!」
銀色の髪に血のように赤い瞳。苦悶に満ちたその表情にされど己の敗北を認める気配はなく。男は獣の如き獰猛な笑みを浮かべると予言めいた言葉を仄めかす。
「決して忘れるな。例え私が滅びても、第二・第三の私がいずれ現れることだろう!」
「なら、その悉くをわたしは止めてみせる!」
男の言葉に負けじと吼え返す声。その手に握りしめられた聖剣が一際強く輝くと、男の体は光の粒子と散った。
――かくして、魔王の支配によって暗黒に満ちた世界は、終わり(エンディング)を迎えた……――
2
――……まったく、本当に反省してるのかな、君は?」
光に満ちた城内。そこには汗に濡れた額を拭う金髪碧眼の少女と、そんな少女から説教を受ける銀髪赤目の魔王というなんともシュールな姿があった。
「してるしてる。もう二度と国中の猫を誘拐なんてしないって」
「そう言って前回は国中の犬を誘拐してたよね? 次はなに、伝書鳩でも攫う気?」
「なるほど鳩か。でも誘拐するのに苦労しそうだな」
「魔王!」
「あー、はいはい。本当に反省してますしましたしております。今度悪事を働く時は国中のケーキを盗むことにしますー」
「盗むのはやめないんだね?」
全く反省の色が見られない魔王に少女のこめかみがヒクヒクと痙攣する。さらには聖剣を握る手が細かく震えてる様子からして、彼女がいつ剣を抜いてもおかしくない程に怒っているのは明白。だというのに全く警戒する様子がない魔王に少し離れた場所から声が放られた。
「何故ケーキなのです?」
「『ケーキがなければパンを食べればいいだろ』って一度言ってみたいんだよね。それに城の連中はケーキとか滅多にお目にかかれないだろ? 魔王からの褒美ってやつ? あ、お前もなんか食いたいもんがあるなら言えよ? 次の計画に使えるかもしれん」
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「――これで終わりだ、魔王!」
どこか重々しさすら感じる城内に凛とした声が響き渡る。
そしてその声に劣らぬ研ぎ澄まされた一閃が、遂にこの城の主を捉えた。
「ぐ、ぉぉおおお――!」
銀色の髪に血のように赤い瞳。苦悶に満ちたその表情にされど己の敗北を認める気配はなく。男は獣の如き獰猛な笑みを浮かべると予言めいた言葉を仄めかす。
「決して忘れるな。例え私が滅びても、第二・第三の私がいずれ現れることだろう!」
「なら、その悉くをわたしは止めてみせる!」
男の言葉に負けじと吼え返す声。その手に握りしめられた聖剣が一際強く輝くと、男の体は光の粒子と散った。
――かくして、魔王の支配によって暗黒に満ちた世界は、終わり(エンディング)を迎えた……――
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――……まったく、本当に反省してるのかな、君は?」
光に満ちた城内。そこには汗に濡れた額を拭う金髪碧眼の少女と、そんな少女から説教を受ける銀髪赤目の魔王というなんともシュールな姿があった。
「してるしてる。もう二度と国中の猫を誘拐なんてしないって」
「そう言って前回は国中の犬を誘拐してたよね? 次はなに、伝書鳩でも攫う気?」
「なるほど鳩か。でも誘拐するのに苦労しそうだな」
「魔王!」
「あー、はいはい。本当に反省してますしましたしております。今度悪事を働く時は国中のケーキを盗むことにしますー」
「盗むのはやめないんだね?」
全く反省の色が見られない魔王に少女のこめかみがヒクヒクと痙攣する。さらには聖剣を握る手が細かく震えてる様子からして、彼女がいつ剣を抜いてもおかしくない程に怒っているのは明白。だというのに全く警戒する様子がない魔王に少し離れた場所から声が放られた。
「何故ケーキなのです?」
「『ケーキがなければパンを食べればいいだろ』って一度言ってみたいんだよね。それに城の連中はケーキとか滅多にお目にかかれないだろ? 魔王からの褒美ってやつ? あ、お前もなんか食いたいもんがあるなら言えよ? 次の計画に使えるかもしれん」
更新日:2017-04-15 23:01:56