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熊さんの事情

 熊さんが小説を書いてみたいと思い立ったのは5年前。
 携(たずさ)わる仕事の内容が変わったためか、熊さんの心に変化を呼び込んだ。“ぱそこん”という、筆に取って替わる文明の利器を手に入れたのも、熊さんがその気になった理由の一つ。
 でも熊さんは、書いたものを人様に見せる気持ちなどさらさらない。熊さんは血の気が多い。女人への煩悩もたくさんある。話しはいつのまにか“えっち”な内容となり、書きながら一人で悦に入っていた。
 でも、数日が経ち、書いた時の興奮が納まって読み直せば、人様に見せる訳でもないのに結構恥ずかしい。
 後日、熊さんは知る。 
「恥ずかしいと言ってるようではもの書きはできねぇ」ことを。
 書くということは思ったことを文にする訳だから、「その人となり」のすべてが文となって表れる。恥ずかしいからといって隠すようでは、思った作品ができ上がらない。でも、そのときの熊さんは、そのようなことなど気づかなかった。

 熊さんはそんなこんなで筋書きも無く、思いつくまま気の向くままに書き、恥ずかしいと言って消すうちに、早くも2年が過ぎた。それだけの年数を、書いて、消してと過ごしていれば、当然、飽きがくる。しかも、残ったものに確かな作品などなかった。有るのは、残りカスのような話しばかり……
 熊さんはため息をついた。
「そろそろ、筋書きを考えた人様に読んでもらえるものを目指してみるか」
熊さんは残った話しの中から、作品として使えそうなものを選びにかかった。ところが、このときの熊さん、思わぬ事態に巻き込まれて創作中断に追い込まれるなどと思いもしなかった。

 熊さんが人様に読んでもらえるものを目指し始めたとき、携わる仕事の内容が変ってから3年余が過ぎて繁忙感が出始めた頃。そのため、よそから”青豆”というのが助っ人として熊さんの仕事場へ来ることになった。
 この”青豆”、いろんな仕事場を経ているためか、自分を売り込むのがうまいうえに親方に取り入るのも長(た)けていて、これまでの実績を滔々(とうとう)と語り、たちまちのうちに親方の信任を取り付けてしまった。朴訥で多くを語らない熊さんと大違いである。
 ところがこの”青豆”、意外な“擦れっ枯らし”だった。

更新日:2017-04-09 07:57:36