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5枚目の地図

96 5枚目の地図①


 道宣に同行を願い、昴胤、雄大、周の三人は、白馬寺に来ていた。住職の曇曜の退院を確認してある。

 寺務所の奥の応接室で待たされた。

「いよいよ最後の地図を拝めるんすね」

 雄大が言った。

「静かにしろ。それは、まだわからない」

 昴胤がたしなめた。

「えー? まだ見せてくれないってことっすか」

 雄大が小声で言った。

「お待たせいたしました」

 そこへ、二人の僧侶を伴って曇曜があらわれた。

「曇曜大師、ご無沙汰をしております。お体は、もうおよろしいのかな」

 立ち上がって道宣が言った。

昴胤たちも立ち上がった。二人の僧侶は、副住職と事務室長だと紹介された。

「どうぞお座りください」

 全員の挨拶が終わると曇曜が言った。

「ところで、例の地図ですが」

 落ち着くのを待って、道宣が言った。

「拝見するわけには参りませんかな」

「やはりその件でしたか。困りましたな」

「困ったとは、はて?」

「道宣大師」

 おもむろに曇曜が言った。

「実はあの地図、今は手元にありませんのじゃ」

「はい?」

「盗難にあいましてな」

「何ですと!」

「拙僧が入院する前には確かにありましたのじゃが、退院してから見てみますと、なくなってましたのじゃ」

「なんと!」



更新日:2017-07-03 17:17:00

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《田川昂胤(こういん)探偵事務所❸「ダルマは哭いた」》