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約束

 56 約束 ①

「ねえねえ、なんで中国の警察に追われなきゃなんないのよ!」

 夕実は、中国の警察は理不尽だといきまいていた。

「だろ? 俺も納得できねえんだよ」

 雄大が応えた。

「所長、中国の警察を訴えましょうよ」

 今後どうするかについて作戦会議をしていたが、なかなか話は前に進まなかった。

 今、全員ここに居る。ただし、パクはすぐ戻るからと言い残し、重次郎に報告するため石垣島離島に帰った。

「そんなことしたって何にもなんねえよ。注目浴びてかえって動きづらくなるだけよ」

 雄大が言った。

「そのとおりだ。逆にこちらが捕まるのが落ちだ」

 昴胤も言った。

「今のところ表だって警察の動きがないだけマシだぜ」

 雄大が言うと、夕実が反応した。

「表だって動きがないって? 警察に追われたんじゃないの?」

 昴胤と周が、雄大を睨んだときは遅かった。

「違う違う。特殊部隊に追われたけど、普通の警察には追われてねえって話しよ」

 あわてて雄大が言い繕ったが、夕実は納得していなかった。

「《雪豹突撃隊》って言っても警察には違いないじゃない! 表だって警察の動きがないってどういうこと!?」

 こうなっては夕実に言い逃れはできない。

「雄大、説明しろ」

 昴胤が雄大に言った。余計な心配をかけまいとしてきたが、夕実もメンバーだ。知らせておくべきかも知れない。

「わかりました」

 雄大がうなづいた。

「夕実ちゃん、実はよ」

 雄大が、夕実のほうに向き直って《雪豹突撃隊》第13中隊の説明を始めた。

 特殊中の特殊部隊で、隊員は全員、あらゆる殺しのテクニックをマスターしていること。あらゆる武器に精通していること。隊員には殺しのライセンスがあること。しかも、公的には存在しないこと。

 中国で襲撃を受けたのはこの連中であること。だから、表の警察は知らないこと。今後もこの連中に狙われるであろうこと。

 こういったことを説明した。


更新日:2017-06-23 14:51:22

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《田川昂胤(こういん)探偵事務所❸「ダルマは哭いた」》