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大阪での捜査
18 大阪での捜査①
「館長から連絡が入るまではこっちの仕事だ。さっそく今日から活動開始する。ただし、俺たちは警察とは違うから 、調査は苦労すると思う。忍耐と根気、この二つだ!」
雄大が写真を配り終えたところで、昴胤が言った。
「オッス!」
雄大と周が声を揃えた。
「所長。みんな一緒に大阪に行くんですか?」
「夕実、一人で事務所に残るのイヤか」
「所長、私を舐めてもらっちゃ困りますわ。瓶詰めレター事件もウォンジャポクタン事件も、私ズーっとズーっと一人でしたよ」
夕実が口を尖らせた。そのとおりだった。いつも夕実を待たせている。今回も連れて行くわけにはいかない。それは夕実もよくわかっている。
「わかったぜ、夕実。それじゃまた留守にするけど、今回は国内だ。そんなに時間もかからんだろう。何かあればすぐ帰って来れる距離だ」
そうは言ったものの、その予想は甘いのではないかとなぜか昴胤は思った。
「担当を決めておこう。雄大は長女と次男。周は長男と次女。俺は愛人二人だ」
2日後。
梅田。阪急東通り。
ビジネスホテルOUK梅田。
1208号室。
23時。
昨日もこの時刻に昴胤の部屋で情報交換を行っている。
「兄貴。今日、俺を尾行してるふてえ野郎がいやがったんでね。取っ捕まえてやろうと - - - 」
そこまで言って、雄大が言葉を切った。
「捕まえたのか」
昴胤が促した。
「すんません。逃がしちまいました」
雄大が、申し訳なさそうに言った。
「つけられたのは、間違いないのか」
「オッス! 間違いないっす。チラチラそれっぽい影が見えました。だから取っ捕まえようと - - - 」
雄大が悔しそうに言った。
「そうか。敵が動き出したか」
昴胤が言うと、雄大が訊いた。
「兄貴。敵ってまさか?」
「今、敵といえば米吉さんの子どもだ」
「しかしまだ今日で二日目だってのに、連中、俺のことがよくわかりましたね」
雄大が感心したように言った。
「ああ。プロが入ってるな。素人の仕事じゃなさそうだ」
昴胤がつぶやいた。
「誰が雇っていますか」
周が、考えながら言った。
「俺は、長女と次男を担当してる。俺をつけるってことは、やっぱりそのあたりから出てるのじゃねえか」
雄大が、言った。
「そうとは限らんさ。米吉さんも含めてみんな怪しい」
この段階で決めつけるのは早計だ。米吉は、犯人はわかっていると雄大と夕実に言ったのだ。米吉が子どもたち全員にプロを張り付けている可能性もある。昴胤は、そう思っていた。
「よし。明日は周と俺も雄大をマークしよう。雄大は、知らん顔していろ」
「オッス」
翌日。
北浜。
オフィス街。
(株)イワサキの本社前。
雄大は昨日と同じように張り付いた。
6時をまわったころ、次男が会社を出てきた。一人だった。
昴胤と周は見ていた。次男の後をつける雄大を、一人の男がつけ始めた。巧妙な尾行だった。昨夜、雄大に見抜かれて用心しているのだろう。
男は、三十代半ば、長身で細身だった。
18 大阪での捜査①
「館長から連絡が入るまではこっちの仕事だ。さっそく今日から活動開始する。ただし、俺たちは警察とは違うから 、調査は苦労すると思う。忍耐と根気、この二つだ!」
雄大が写真を配り終えたところで、昴胤が言った。
「オッス!」
雄大と周が声を揃えた。
「所長。みんな一緒に大阪に行くんですか?」
「夕実、一人で事務所に残るのイヤか」
「所長、私を舐めてもらっちゃ困りますわ。瓶詰めレター事件もウォンジャポクタン事件も、私ズーっとズーっと一人でしたよ」
夕実が口を尖らせた。そのとおりだった。いつも夕実を待たせている。今回も連れて行くわけにはいかない。それは夕実もよくわかっている。
「わかったぜ、夕実。それじゃまた留守にするけど、今回は国内だ。そんなに時間もかからんだろう。何かあればすぐ帰って来れる距離だ」
そうは言ったものの、その予想は甘いのではないかとなぜか昴胤は思った。
「担当を決めておこう。雄大は長女と次男。周は長男と次女。俺は愛人二人だ」
2日後。
梅田。阪急東通り。
ビジネスホテルOUK梅田。
1208号室。
23時。
昨日もこの時刻に昴胤の部屋で情報交換を行っている。
「兄貴。今日、俺を尾行してるふてえ野郎がいやがったんでね。取っ捕まえてやろうと - - - 」
そこまで言って、雄大が言葉を切った。
「捕まえたのか」
昴胤が促した。
「すんません。逃がしちまいました」
雄大が、申し訳なさそうに言った。
「つけられたのは、間違いないのか」
「オッス! 間違いないっす。チラチラそれっぽい影が見えました。だから取っ捕まえようと - - - 」
雄大が悔しそうに言った。
「そうか。敵が動き出したか」
昴胤が言うと、雄大が訊いた。
「兄貴。敵ってまさか?」
「今、敵といえば米吉さんの子どもだ」
「しかしまだ今日で二日目だってのに、連中、俺のことがよくわかりましたね」
雄大が感心したように言った。
「ああ。プロが入ってるな。素人の仕事じゃなさそうだ」
昴胤がつぶやいた。
「誰が雇っていますか」
周が、考えながら言った。
「俺は、長女と次男を担当してる。俺をつけるってことは、やっぱりそのあたりから出てるのじゃねえか」
雄大が、言った。
「そうとは限らんさ。米吉さんも含めてみんな怪しい」
この段階で決めつけるのは早計だ。米吉は、犯人はわかっていると雄大と夕実に言ったのだ。米吉が子どもたち全員にプロを張り付けている可能性もある。昴胤は、そう思っていた。
「よし。明日は周と俺も雄大をマークしよう。雄大は、知らん顔していろ」
「オッス」
翌日。
北浜。
オフィス街。
(株)イワサキの本社前。
雄大は昨日と同じように張り付いた。
6時をまわったころ、次男が会社を出てきた。一人だった。
昴胤と周は見ていた。次男の後をつける雄大を、一人の男がつけ始めた。巧妙な尾行だった。昨夜、雄大に見抜かれて用心しているのだろう。
男は、三十代半ば、長身で細身だった。
更新日:2017-04-29 14:21:11