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16 昂胤・周、帰国②


「2枚でワンセット? どういう意味だ?」

 雄大が訊いた。

「2枚揃そろわないと目的地にたどり着けないようになっているのだわ、きっと」

「なるほど。しかし、なんで日本と中国に?」

 雄大がまた当然の疑問を発した。

「そこまではまだわかんないけど、仏教に関係あるのじゃないかしら。だって1枚は少林寺にあったのだもの」

「そうだな」

「でも、どうやって解読すればいいのかしら」

 一番肝心なところがわからない。

「ユーちゃん。写真に撮ってデータを私に送ってくんない?」

 雄大は、見かけによらずカメラが趣味だ。いいカメラを持っている。米吉の家族の写真も、1,000ミリの望遠レンズを使って雄大がすべて撮影してくれた。

「おお、わかった。ちょっと待ってくれ」

 雄大が自分の席にカメラを取りに行った。

「夕実。2枚でワンセットだと言ったな」

昂胤が訊いた。

「ええ」

「じゃ、別の1枚に2枚の図をそのまま重ねて描いてみるか」

「はい。私もそれを考えました。それでユーちゃんに撮影してもらおうと」

「さすがだ」

「パソコンで合体してみます」

 雄大が戻り、カメラを構えた。

「もしかするとまだあるのかもな」

 昴胤が誰にともなく言った。

「2枚じゃなく?」

 夕実が昴胤の言葉を拾った。

「ああ。全部で3枚とか5枚とか - - - - 。とにかく2枚じゃないような気がする」

 昴胤が言った。

「所長、冴えてるゥ! きっとそうですよ」

 夕実の目が輝いた。

「じゃ、他の地図はどこにあるんだろ」

 雄大が一人言を言った。

「館長さん、何かご存知ないかしら」

夕実が言った。

「そこまで、訊きませんでした」

周がそう言って昴胤を見た。

「ボス。電話しますか」

「そうだな、確認したほうがいいな。情報を集めて地図を完成させよう」

 昴胤が言った。

「じゃ、電話します」

「ああ」

「所長。一つ教えてください。聞き忘れていたことがあります」

 夕実が、昴胤に言った。

「何だ」

「米吉さんは最初、所長を訪ねて来られたのですが」

「俺を?」

「はい。お帰りの際に『田川はんによろしく』とおっしゃって」

「ほう」

「所長はご存知じゃないようですね」

 雄大が引き留めて米吉から話を聴き出したが、昴胤が不在と聞いて最初は帰ろうとしたのだ。だから、てっきり昴胤の知り合いだとばかり思っていた。でも、昴胤は知らないようだ。米吉が意識不明で入院中のため、確認のしようがない。

「もう気にするな。ネットでも見たんだろ」

「そうですね」



更新日:2017-04-29 14:20:02

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《田川昂胤(こういん)探偵事務所❸「ダルマは哭いた」》