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赤いドラゴン
目の前には俺に覆いかぶさるようにを覗き込む青い瞳。よく見てみると銀色の鎧を着た女騎士だった。ヘルムは被っておらず、方まである柔らかい金髪が風になびく。
女騎士を挟んで向こう側には岩のように大きな赤いドラゴンが翼を広げて大きく口を広げた。
何だこれは、どこか映画のセットの中にでも迷い込んだのだろうか。辺りを見渡すと生い茂る木々が空を覆い尽くして薄暗い。
目の前の青い瞳を指差して、
「手の込んだセットだなー。その鎧も良く出来てるね」
そんな一言が癪(しゃく)だったのか、
「ふざけるな!」
と胸ぐらを掴んでいた腕を激しく上下させられた。頭が揺れる。
「く、苦しい」
グオォォ――。
突然地響きのような低音が辺りに響き渡った。あまりにも大きな音に周りの木々が揺れ、慌てた小鳥達が一斉に飛び立つ。
「まずい!」
女騎士は片手で俺を木陰に放り投げた。綺麗な放物線を描いて背中から着地した。
「うっ、何するんだよ」
「そこでじっとしてろ」
そう吐き捨てると背中に背負っていた剣を構えた。その獲物は女騎士の背丈とほぼ同じ長さがあり、かなり幅のある両刃剣だった。見た目は重そうだが中は空洞だったりして意外と軽いのかもしれない。
「うおおお」
彼女は大剣を下に構え、巨大なドラゴンへと突進していった。大剣がドラゴンの足に弾かれ火花が出た。
火花? これってセットなんだよな? 映画の撮影かなんかなんだよな? だんだん不安になってきた。
大きく開けられたドラゴンの口から突然巨大な火の玉が生まれ、女騎士の方へと放たれた。
「はっ」
一閃。火球は真っ二つに切り裂かれ狙いを外した。ものすごい爆風と爆音が俺を襲う。火球が当たった場所を見ると地面がえぐれていた。その威力の凄まじさに驚愕する。ここまで来るとフィクションには思えない。ここから逃げないと。
俺は立ち上がり、ドラゴンが佇(たたず)んでいる方向とは逆の方角に向かって走ろうとしたが、生い茂る草に足を取られて転んでしまった。
その姿を見たドラゴンが俺の方に大きな足音を近づける。
再びドラゴンの口に火炎が集まり、轟音を立ててそれが飛んできた。
「もうダメだ」
絶叫した俺はとっさに腕を前に出して防御姿勢を取る。
が、熱くも痛くも無い。
そう思った瞬間、放たれた火球は俺の目の前に現れた半透明の壁に当たり、甲高い音を立てて天高くへと弾かれていった。
その瞬間、激しい風圧が俺を襲う。飛ばされないように近くの木にしがみつく。
ドラゴンが翼を広げて木々をなぎ倒しながら遠くへ飛んでいった。
霞む瞳でその姿を見た俺は薄れ行く意識の中で女騎士の声を聞いた。
女騎士を挟んで向こう側には岩のように大きな赤いドラゴンが翼を広げて大きく口を広げた。
何だこれは、どこか映画のセットの中にでも迷い込んだのだろうか。辺りを見渡すと生い茂る木々が空を覆い尽くして薄暗い。
目の前の青い瞳を指差して、
「手の込んだセットだなー。その鎧も良く出来てるね」
そんな一言が癪(しゃく)だったのか、
「ふざけるな!」
と胸ぐらを掴んでいた腕を激しく上下させられた。頭が揺れる。
「く、苦しい」
グオォォ――。
突然地響きのような低音が辺りに響き渡った。あまりにも大きな音に周りの木々が揺れ、慌てた小鳥達が一斉に飛び立つ。
「まずい!」
女騎士は片手で俺を木陰に放り投げた。綺麗な放物線を描いて背中から着地した。
「うっ、何するんだよ」
「そこでじっとしてろ」
そう吐き捨てると背中に背負っていた剣を構えた。その獲物は女騎士の背丈とほぼ同じ長さがあり、かなり幅のある両刃剣だった。見た目は重そうだが中は空洞だったりして意外と軽いのかもしれない。
「うおおお」
彼女は大剣を下に構え、巨大なドラゴンへと突進していった。大剣がドラゴンの足に弾かれ火花が出た。
火花? これってセットなんだよな? 映画の撮影かなんかなんだよな? だんだん不安になってきた。
大きく開けられたドラゴンの口から突然巨大な火の玉が生まれ、女騎士の方へと放たれた。
「はっ」
一閃。火球は真っ二つに切り裂かれ狙いを外した。ものすごい爆風と爆音が俺を襲う。火球が当たった場所を見ると地面がえぐれていた。その威力の凄まじさに驚愕する。ここまで来るとフィクションには思えない。ここから逃げないと。
俺は立ち上がり、ドラゴンが佇(たたず)んでいる方向とは逆の方角に向かって走ろうとしたが、生い茂る草に足を取られて転んでしまった。
その姿を見たドラゴンが俺の方に大きな足音を近づける。
再びドラゴンの口に火炎が集まり、轟音を立ててそれが飛んできた。
「もうダメだ」
絶叫した俺はとっさに腕を前に出して防御姿勢を取る。
が、熱くも痛くも無い。
そう思った瞬間、放たれた火球は俺の目の前に現れた半透明の壁に当たり、甲高い音を立てて天高くへと弾かれていった。
その瞬間、激しい風圧が俺を襲う。飛ばされないように近くの木にしがみつく。
ドラゴンが翼を広げて木々をなぎ倒しながら遠くへ飛んでいった。
霞む瞳でその姿を見た俺は薄れ行く意識の中で女騎士の声を聞いた。
更新日:2017-03-27 21:36:30