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ホワイトデー

挿絵 350*499

今日は仕事が早く終わった。
久し振りにニノに旨いもんでも作ってやろうって思って
近所のスーパーに向かった。


買い物籠をカートに積んで
店内を歩き回ってると

「ホワイトデーフェア」

ってコーナーが設置されてて
そこに沢山のお客さんが群がっていた。


あ・・・今日ってホワイトデーか・・・
すっかり忘れてた。

バレンタインデーにはニノから
今年もチョコレートケーキを貰って食べたんだよな。
あれは本当に美味かった。

良かった。ここに来なかったら
きっと忘れて機嫌を損ねちゃうところだった。

だけど、さすがにそこに近付いたら
俺の存在にきっと気付いて
騒ぎになっちゃうから
それは出来ないし・・・

今夜のメニューの食材だけ
籠に入れて、俺はレジに向かって歩き出した。

すると・・・
俺の目に飛び込んで来たのは
フルーツのコーナーに有った
苺だった。

真っ赤な苺の隣に並んだ白イチゴ。

あ~懐かしいな。
10年近く前だっけ・・・
ニノと実験の番組で食べた記憶が蘇った。

んふふ・・・これにしようっと。
値段は普通の苺より高めだったけど
これが甘いのを俺は知ってる。

俺は形が綺麗なのを選んで籠に入れ
レジで支払いを済ませて家に戻った。


夕方、仕事を済ませたニノが
何も知らずに家に戻って来た。


和 「ただいまぁ・・・」

智 「お帰り」

和 「へえ。夕食作ってくれてるんだ?
   今夜は何ですか?」

智 「ニノが大好きなハンバーグ」

和 「ぃやったぁ~。俺、着替えてきますね」


それから2人で夕食を食べて
食後にコーヒーを淹れて
それと一緒にさっきスーパーで買った白イチゴを
皿に乗せてニノに差し出した。


和 「わわっ・・・何?白イチゴ?」

智 「うん。今日はホワイトデーだから・・・」

和 「あっ、そうか。忘れてた」

智 「それ見て思い出したの」

和 「あ~あれでしょ?驚きの嵐?」

智 「うん、2人で発見したんだよね」

和 「そうそう。日光に当てないと赤く育たなくて
   でも味はめっちゃ甘いんだよね」

智 「覚えてんだ?」

和 「勿論ですよ。あの企画面白かったもん」

智 「おいらはお前と行ったロケは全部面白かった」

和 「もぉ~何だよ。今更恥ずかしいなぁ///」

智 「いいから食ってみて」

和 「それじゃ、頂きまぁーす・・・あっ甘~い」

智 「マジか・・・」

和 「ええ?バレンタインのお返しってこれだけかよぉ」

智 「んなわけないじゃん。いいか?」


俺は皿から大きめのイチゴを一つ取り上げて
ヘタの方を前歯で軽く挟んで
ニノの肩を抱いて、先っぽから食べろって
顎を突き出して伝えた。

ニノは口元を覆って笑った。
その仕草がなんとも可愛らしくて
俺も待ち構えながら
んふふふって笑った。
そして、嬉しそうに俺の両肩に手を乗せて
そのイチゴを先の方から
あーんって食べ始め
お互い半分くらいの所で
噛みちぎって
そのまま唇を重ねた。

そのままニノをソファーに押し倒して
その苺をモグモグやってるニノに
更に口付ける。

甘くて苺のイイ匂いが
ニノの口からふんわりと香ってくる。
もっと味わいたいから
奥深く絡ませてると
もう、苺の実は残ってなくて
だけどまだ甘酸っぱくて・・・


ちゅっ、くちゅっ、ちゅっ・・・


和 「っん・・・ねっ?」

智 「んっ?」

和 「あの頃も俺とこういう関係になりたいって
   思ってました?」

智 「えっ?ニノは?」

和 「思ってたよ・・・」

智 「おいらも・・・」


悪戯に時間だけが過ぎたけど
好きという想いだけは
今も変わらず・・・
いや、きっとあの時以上に愛おしい。

思い出の白イチゴも
あの時と同じで・・・
何にも変ってないんだ。

それはきっとこれからも同じなんだって
俺は思いながら、白イチゴよりも白い
ニノの首筋に唇をそっと這わせると
甘い吐息がニノの口元から零れて
艶かしく身を捩った。


俺のホワイトデーのお返しは
甘い思い出を添えた
至って真面目な

愛してる・・・の、スペシャルバージョン。
満足そうにニノもそれを受け取ってくれた。









おわり


更新日:2017-03-15 16:11:50

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