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Новая жизнь ~対峙~

事切れ、物言わぬ躯となったに祖母の身体にアレクセイは縋りついて声を上げて泣いた。
国民の怨嗟の標的になり得る貴族とはいえ、武器一つと持たない老齢の女性とその使用人たちに対して行われた行為は、人間のすることではなかった。
だが、怒りに狂った集団というものは、時として信じられないことを平気で行う。

暴徒と化した民衆がこの屋敷になだれ込み、無防備の祖母と使用人たちに襲い掛かった。
自分たちが、民衆を説得するために撒いたビラの内容は、どこをどう間違ったのか、ボリシェヴィキを非難し、中傷するものに書き換えられていた。
その中にはアレクセイを標的とし、その妻であるユリウスの事が赤裸々につづられているものがあった。おまけに、その文末には『ドイツのスパイを許すな』の一文が添えられている。明らかに、民衆を煽りたて扇動する目的が見て取られた。

制御を失った民衆はそれだけで暴力の塊となる。ただでさえ、抑圧されたものが爆発寸前となっていたのだから、ちょっとした刺激でそれは雪崩のように押し寄せてくる。

今回のミハイロフ家襲撃はその典型だった。

多くの同志の逮捕や拠点を押さえられた、アレクセイ達生き残りボリシェヴィキは地下に潜った。当然、情報の収集がうまくいかない。アレクセイがミハイロフ家襲撃の事を知ったのは、屋敷に足を踏み入れその惨状を目にした時だ。
街中に溢れていた民衆のデモが落ち着いたのを見計らって、ユリウスと祖母の安否確認ため生家を訪れた。
だからこそ、この惨状はアレクセイを打ちのめした。

どれだけの時間が流れただろう、アレクセイははっと顔を上げた。その顔は涙でぐしゃぐしゃだったが、あることに気が付く。
 
ユリウスの遺体がない・・・・

祖母をはじめ、オークネフ、リザ、そのほかの使用人たちの遺体はある。ユリウスのだけがないのだ。屋敷の中の状態を考えると、家の中に隠れることは不可能だ。家中すべてを見たわけではないが、相当数の民衆がなだれ込んできたはず。祖母の部屋もクローゼットの奥まで荒らされている。

ゆらゆらと立ち上がり、声をからして妻の名を呼んだ。

「ユリウス、どこだ!!いるなら返事をしてくれ!」

生きているかもしれない、この屋敷のどこかに。どこだ?身重の女が隠れる場所。

更新日:2018-07-06 18:08:04

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