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キリンスキーら臨時政府の策略で壊滅的な痛手を負ったアレクセイ達は、活動拠点をことごとく抑えられ、中傷ビラで民衆の信頼を失ってしまった。

特にアレクセイは、ユリウスの事を公にされ、印刷所に保管をしていた重要書類を持ち出そうとした時に、士官学校の生徒に襲われ怪我を負った。
そのうえ、実家であるミハイロフ家が民衆に襲撃されたことを知らなかった。

傷を押してミハイロフ家にいつものように向かうと、明らかにその空気が違っていた。
蟄居の立場とは言え、ユリウスを預けていた時には人の気配があった。それなのに今は、恐ろしいほど静まり返っていた。

邸内に入ると、調度品やシャンデリア、階段に至るまで傷だらけだった。

一瞬にして背筋が凍った。

「ユリウス、どこだ?!おれだ、アレクセイだ!!どこにいる!」

言いようのない静寂。不気味なほど静まり返っていた。
嫌な感覚だけが起こる。物音一つしない。自分の声と足音が異様に響いていた。

屋敷の奥へと進むと、ところどころに血痕が見て取れる。背筋が凍るようだ。
爵位剥奪となってから、最小限度の使用人しか置いてなかった。その使用人たちの躯が転がっていた。

「これは・・・」

全身の血が引き、震えが起こってきた。この屋敷で何が起こったのかようやくわかってきたのだった。
襲撃され、無残な姿をさらしていた。

点々と続く血痕を追っていくと、祖母の寝室の扉が半開きになっていた。恐る恐る除くと、事切れていた老齢の執事が横たわっている。

茫然とした。

血だまりの中で、その執事は物言わぬ体をなしていた。

「オーク・・・ネフ・・・・・・」

引き取られた時から、厳しい祖母の目をかすめるようにかばってくれた。丁寧で実直で真面目な、そして優秀な執事だった。

その彼が無残にも躯となって自分の目の前で横たわっている。

更に部屋の奥に視線を泳がせると、うつぶせになっている祖母の姿があった。

「お・・・ばあ・・・さ・・ま・・・」

いつもの部屋着を身に着けた姿だ。が、執事と同じように血だまりの中で突っ伏している。よろよろと足を進め、そのそばで祖母の身体に触れた。

「おばあさま・・・・どうして・・・」

一気に涙が溢れた。

ーーなぜだ?!これが民衆の答えなのか?!こんなことがあるのか・・・?!

兄貴、あんたが死んだのはこんなことのためなのか?

アレクセイの嗚咽が静まり返った屋敷に響き渡った。

更新日:2018-06-27 00:26:29

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