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Новая жизнь ~スズラン~

フォンタンカ運河に張っていた氷が解け始めた。気温が上がってきて、春が近いことがわかる。
運河沿いを歩いていたアレクセイは、自分の手に息を吹きかけた。手袋をしていても指先が冷える。
いくつかの路地を抜けて、自分の住まいがあるアパートに入っていいった。
鍵を取り出し玄関のドアを開ける。なかに入ると、カーテンが閉められているせいか薄暗い。雑然とした室内。脱ぎ捨てたように椅子の背もたれに衣服がかけられている。テーブルの上は書類や新聞、本がうずたかく積まれていた。視線を奥の台所に向けたが、食器や鍋が放り込まれているのを見ると自然とほうっと、ため息が出た。

「あいつがいないだけで、この有様か。これを見たらなんて言うだろうな・・・」

一人呟く。
ユリウスをミハイロフ家に預けてから、彼女が磨き上げ整えてくれていた部屋の有様が変わってきた。まるで、彼女と暮らす前のような状態になってくる。
待っている人がいないわけだから部屋に帰ってくる頻度も減る。着替えを取りに戻るか、ベッドで眠りたいと思った時しか部屋にいない。
以前と変わったことは、身だしなみに気を遣うようになったことくらいだ。

カーテンを開け、窓を開いて空気を入れ変える。洗濯屋に持っていく衣類を袋に入れ、台所の洗い物を片付けた。ざっくりとだが床を掃除し、ベッドを整える。クローゼットから変装用の鬘とひげを出し、身に着けアパートを後にした。

更新日:2017-06-07 07:40:54

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Еще одна история オルフェウスの窓