• 34 / 60 ページ

Новая жизнь ~思い出~

子どもを身ごもってから、ユリウスは眠気に襲われるらしく、昼寝をするようだ。
アレクセイとの逢瀬の時は特によく眠る。

今日もひとしきり愛し合った後、ユリウスはベッドの住人になっていた。
寝息を立てる妻に口づけを落とし、アレクセイはかつて自分が使った部屋に向かった。

その部屋は鍵もかかっていないが、常に誰かが使っているわけではないので、カーテンが閉じられている。
自らカーテンを開け、光を入れる。

アレクセイが出奔してから、オークネフが時折空気の入れ替えに窓を開けてくれていたと聞いている。

ユリウスをこの屋敷に預け、折りを見て訪れてはいたが、自分の部屋まで来たことはなかった。

あの日、兄・ドミートリィが逮捕され、自分もその対象になってしまったため、着の身着のままでこの屋敷から出奔した。その時のままだ。
兄の逮捕は夜半だった。ホールの騒ぎに飛び起き、駆け付けようとしたところをアルラウネに止められた。
机の上には、書きかけのノート。辞書や教本が広げられたままだ。椅子にはガウンがかけられている。

「おばあさまは、何もかもそのままにしていたのか・・・」

兄の部屋がどうなっているのか、入ったことがないからわからないが、おそらく自分の部屋と同じ状態だろうと推測がついた。
あの日以来、祖母の時間は止まったままなんだろう。それほど祖母の落胆と絶望は大きかったのだ。

家具とベッドには埃除けの布がかけられ、そこに主が長くいなかったことを示している。
ゆっくりと部屋の中を一回りし、思い出を反芻する。

初めてこの部屋を使うようになったのは、引き取られたその日からだった。

更新日:2017-05-09 22:42:10

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

Еще одна история オルフェウスの窓