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待ちわびたアレクセイの訪問だった。
屋敷に現れた彼はくたびれた格好をしていた。おばあさまは呆れ、オークネフは目を丸くしている。貴族の屋敷に入るのだから、細心の注意を払わなければならない。変装は当然だった。

ぼくの部屋に入ってきたアレクセイに飛びつくように抱き着いた。

「おいおい、そんなに走るな。なにか・・・」

彼の言葉を遮るように自分の唇を押し当て舌を絡める。驚いたように身体を一瞬だけ固くしていたけれど、すぐに情熱的に口づけをしてくる。身体を引き寄せられ、逞しい腕に抱かれると全身に痺れが走るようだ。
この時がぼくはたまらなく好きだった。
少し顔を離した彼が言う。

「どうした?」
「どうもしないよ。会いたかったんだもの」

少しすねたように答える。彼の胸にほほを摺り寄せ、背中に両手を回す。逞しい彼の身体をぎゅっと抱きしめた。

「変わりないか?」

言葉に出さず、首を縦に振る。

「つわりは治まったのか?」

さっきと同じように首を縦に振った。

「おい、答えろよ」

ぼくはいやいやをするように、首を横に振った。

「ユリウス」

聴きなれた声にうっとりする。こんなにもあなたが好きなんだ。全身全霊をもってあなたが好き。

ふっとため息のようなものが聞こえたとたん、抱き上げられた。

「アレクセイ」
「しょうがねえな。いつからこんなに甘えん坊になったんだ?」

呆れたように言うアレクセイの首に両手を回した。

ゆっくりとベッドに横たえられると、アレクセイがぼくに覆いかぶさってきた。
優しい鳶色の瞳。さらさらと流れる亜麻色の髪。ぼくのほほを撫でる大きな手。口づけをしてくるあなたの唇は熱い。
アッという間に着ているものを床に落とされ、素肌があらわになる。彼は必ず、ぼくの傷跡に口づけを繰り返す。愛おしむように何度もキスをしてくれる。彼の唇が肌にあたるたびに、かっと燃えるように火照る。そして、身体の奥からマグマのようにどくどくと湧き上がるものに翻弄されていく。

もっと愛して。気が遠くなるくらい。あなたの火照る肌に触れると、ぼくは安心するんだ。

更新日:2017-04-20 08:19:12

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