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 このカルナッツ王国近辺では、殺し合いという戦などほとんど無い。国民を愛し、草木までもを大切に想うシュヴァルツ大魔王の統制の甲斐あって、魔界は至って平凡な日常を描いていた。

 それでも天を仰げば、渦巻く黒状の雲が辺り一面を覆い隠している。城の周りには竜の群れと、身体を切り刻んでしまうかの様な刺々しい山脈が取り囲んでおり、誰しもの近づく者の気配すら無い。

 稀代の魔王サタンやルシフェル、ベルゼブブやマモンなど、ありとあらゆる魔界の冥王達の時代は時既に終わりを迎えていたのだった。

「ねーねーオルヴィ。いつになったら我は人間界に行けるのかなぁ?」

「あんたねー。そのない頭で考えてごらんなさい! 今まで人間界に行った事のある悪魔なんて、誰もいないのよ? このモニターで監視出来るだけ、ありがたいと感謝しなさいな」

――――――そう

 今まで威厳を博していたのは紛れも無く、魔界と人間界を唯一繋いでいる四つのモニター。朝、昼、夜と、モニター越しに息巻いていたのだ。

「で~も~。人間共を平伏せる事が出来れば猫なる生き物や、犬なる生き物を我が手中に納めることが出来るのだぞ? ロマンではないか~!」

「あんたねー。私と犬猫のどっちが好きなのよ~!」

 魔剣ブリンガーを振り回し、慌てて飛び退く大魔王の背後を捉える王妃。

 王の間でじゃれ合いを愛しんでいると、一匹の使い魔がいつも以上の鋭い目つきで慌てふためき、室内へとやって来た。

「魔王様ー! 王妃様ー‼︎ 大変です。直ぐに研究室までご同行頂きたい」

 何をそんなにも慌てているのかと、大魔王様も王妃様も、呑気なことを口ずさむのでした。

更新日:2017-03-12 00:24:40

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大魔王様だからって…許さないんだからね!