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六番札所

一番札所霊山寺から極楽寺、三番札所金泉寺、ここまでは足慣らしと言われるように約1時間少しでお参りを終えた。

心配していた嘉平の足元もここまでは無難な様子である。
四番札所の大日寺へは山の中を通る。

「嘉平さん、ここいらでお昼にしましょう」實が声を掛ける。

いつの頃からか實は「嘉平さん」と呼び、嘉平は「實」と呼ぶようになっていた。
實は嘉平に「實」と呼び捨てで呼んでくれることに距離が近くなったようで安堵を覚えていた。

「そうだな、一休みしようか」嘉平が答える。

山中の細道を離れて二人が座れる場所を探す。
實のリュックにはシートが括り付けてある。

「シート広げますから、ちょっと待ってください」實がリュックからシートをとって広げる。
二人は並んで座り途中で買ったおにぎりを頬張る。
屋外で二人きりで並んでおにぎりをほおばるのは昨夏の市中の小山行以来である。

「實、本当について来てよかったのか?」
「年寄りが一人じゃかわいそうだと思ってお慈悲で来てくれたのか?」
「無理しているのなら引き返してよいんだぞ」
嘉平は真面目な顔をして語りかける。

「いえ、感謝するのは私の方です」
「お遍路は嘉平さんと知り合う前から計画していたのですが決断できなくて・・・」
「それを後押ししていただいたようなものです」

「そうか、それならよいが・・・」

二人がおにぎりを食べ終わると實はシートを片付け始める。

嘉平は「ちょっと用を足してくる、不作法だが年寄りは近くて困る。許してもらおう」
嘉平は白衣の裾を両手で開いて褌をまさぐっている。
實はそれとなく目をやる。

やがて嘉平は戻り二人は歩き始める。

大日寺、地蔵寺、安楽寺と歩く・・・このころになると嘉平の足取りに少し変化がみられるようになった。
ここまで約20kmを歩いたことになる。
普通のウォーキングなら20kmはそれほど苦になることはない。
問題は嘉平の足元である。
きっとどこかが痛むのであろう。

無理は禁物である。
實は安楽寺の宿坊に泊まれるか問い合わせる。
幸運なことに二人の余裕はあるという。

「嘉平さん、今日は安楽寺の宿坊にお世話になりましょう」
「大丈夫だ、まだいけるさ、少々苦しくてもこれはお遍路、大師様の志と共に歩くのだから」
嘉平は頑として受け付けない。

「でも、まだ一日目です。常識的に足慣らしの一日でしょう」

何度かの説得ののち嘉平はしぶしぶ實に意向に従うことになった。

安楽寺の宿坊はその名の通り昔は温泉であった所以を引き継いで薬湯となっている。
二人でその湯のおせわになる。

嘉平の衣装は白衣のみである。
その白衣を脱ぐと真っ白なガーゼ地のふんどし一枚であった。
小柄だが痩せているというほどではない嘉平の裸は實には眩しく見えた。

後ろ向きになっている嘉平がふんどしの紐を解くとその布を外す。
小ぶりのお尻の下は老人特有の皺がある。
それほど凝視することもできないので實は目をそらす。

二人はかけ湯をして湯につかる。
嘉平の体は贅肉のない必要最小限のような体である。
髪は今は坊主頭だが白髪である。眉毛はまだ黒い。
實はそれとなく観察する。

陰毛はそれなりに茂っており半分くらいは白くなっている。
嘉平の股間の物はそれほど大きくはないが整った形をしてぶら下がっている。
なんとなくいかにも嘉平の物といった感じで實はなぜかほほえましい気持ちになった。

二人は汗を流すと湯から上がる。
嘉平は後ろ向きにタオルで体をぬぐっている。
屈んでぬぐう姿勢は嘉平の睾丸が後ろから丸見えである。
實は少々の罪悪感を覚えながら昂ぶりを感じる。
そして部屋に戻った。

「体を揉みましょうか」實が嘉平に声を掛ける。
ここは宿坊である。あまり目立った行動はできない。
でも初老の夫婦連れのような組はマッサージもどきをしている人も見かける。

「すまんな、じゃ足だけ少し揉んでくれるか」
嘉平は仰向けのまま足を出す。

「うつぶせになってください」
「あっ、そうか」と言うなり嘉平はうつぶせになる。
足の裏は赤く腫れ気味である。
實は見よう見まねで嘉平の足の裏から足首、そしてふくらはぎを軽く揉む。
「いたたっ」嘉平は少し声を上げる。
「だから言ったじゃないですか、靴にしましょう。そうすればもっと楽ですよ」
「嫌だ・・・楽をするなら家で寝てる」嘉平は憎まれ口を叩く。

實は揉みあげてふくらはぎから太ももに移る。

嘉平のお尻のふくらみが白衣を通して目につく。
脇に下帯のラインがくっきりと映っている。

やがて嘉平が寝息を立て始めていた。

更新日:2017-03-06 10:25:05

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