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老いて迷路-2

隣席の男の手は、嘉平が強く抵抗することがないことを知ると大胆になってきた。直接股間を手で触り始める。嘉平はどうすればよいのかわからなかった。
ただ拒否感を持っていないことに自ら少し戸惑いを感じた。

嘉平はスクリーンを見ながら・・・その場面は禿げ頭の男が若い嫁の口の奉仕を受けている場面で、男は声を出して口を半ば開いて喜んでいるところであった・・・・そのスクリーンの男と同化するような気持ちになっていた。

隣席の男がファスナーに手を伸ばしても抵抗をするどころかむしろ期待をしている自分を感じていた。
男はファスナーを下ろして股引の合わせを指で開こうとしていた。
ただその下は合わせがない晒し布である。男は戸惑った様子でズボンのベルトをはずしにかかった。
ベルトは穴で止めるタイプではないのですぐにはずされた。
ズボンを開いて股引と一緒に膝に向けておろそうとしていた。
嘉平はお尻を少し上げてそれを助長した。

やがて嘉平の下帯だけの下半身が曝された。
思わず回りを見回し近くには誰もいないことを確認する。
男の手は大胆に右手で嘉平の下帯をその下のモノと一緒にもみ始めた。

嘉平はこんなところでこんな姿態を・・その恥ずかしさに我に返りかけるのだが、スクリーンの善がり声が嘉平を恥知らずに引き込んでしまうのである。
伸縮のしない下帯では取り出すのは難しく男は結び目を捜しはじめる。
腰の左側に結び目はある。
だが嘉平はそこまでは勇気がなかった。

男の手を必死で抑え露出までは許さなかった。
男はそれ以上の事はしないであきらめたようであった。

右手で触りながら
「お父さん、素敵ですね」

耳元で小声でささやいてくる。
「下まで触らせてほしい」

そうささやく男に嘉平は
「・・・・・」

何も答えることはしなかった。
やがて映画は終わり明るくなった。急いで身を整えた嘉平は帰り支度を始めた。

「また会いたい、来週のこの時間、ここで待ってます」
男はそうささやいた。嘉平は何も言わず立ち上がった。
後ろをみることもなく急ぎ足で駅に向かって歩いた。
後ろめたさと、何かわからない興奮を覚えて・・・・。

更新日:2017-03-06 08:37:16

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