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小五郎が大通りに向かって歩いて行くのを横目で追いながら、
コナンが哀に話しかけた。

「灰原、オメーはどうする?」
「私は遠慮しておくわ。今日はやりたいことがあるのよ」
「研究か?」
「まあ、そんなとこかしら?」
「わりぃけど、今夜は、俺、おっちゃんと夕食を食べるよ」
「ええ、わかったわ」
「うん、じゃあ、また連絡すっから」

コナンが急いで小五郎を追いかけようとすると、
哀が腕を掴んで引き止めた。

「ちょっと待って!」
「どうした?」

不思議そうな顔で哀の方を振り向くと、
「え!?」とコナンが小さな声を上げた。

哀の唇がコナンの頬にチュッと触れたのだ。

たちまちコナンの顔が茹でだこのように真っ赤になっていく。

「気をつけてね」と哀がニコリと微笑むと、彼の腕を離した。

コナンがその場に固まって動けずにいる。

「ほら、早く行きなさいよ! 毛利探偵がタクシーに乗っちゃうわよ」

「おっ、おう!」と哀の声に慌ててコナンが駆けだした。

途中でコナンの足がもつれてズッコケている。

頬にキスしただけであの動揺ぶりに思わず、哀が呟いた。

「彼からキスしてくれる日なんて来るのかしら……」

そんなはがゆい思いとは裏腹に哀が背中で手を組むと、楽しそうに歩き出す。
今日はほんの少しだけ進んだ関係に哀の足取りも軽やかだ。

「私も早く帰らないと、ゆっくり見られないわね」

今夜九時から比護隆佑を特集したサッカー番組が放送される。
その前に夕食もお風呂も済ませてしまいたい。

そう、哀の今夜の用事とは比護の番組のことだった。

コナンが哀より事件の謎に夢中なら、哀もまたコナンより比護にご執心。


二人の恋はまだまだこれから、ただいま発展途上中────。



おわり。

更新日:2017-03-10 13:16:18

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小さな恋、見つけた。【コナンでコナン×哀】 小学生時代