カランコロンと音を鳴らして喫茶店『ポアロ』のドアが勢いよく開くと、
少年が慌てたように店内に駆けこんでくる。

どこからか走ってきたのか、少年は「はぁ、はぁ」と浅い呼吸を繰り返す。

「いらっしゃいませ！」

好青年を絵に描いたような男がカウンターの中から客を出迎える。

彼の名は安室透。

その優しい物腰と人好きのする柔らかな笑顔で、
小さな子供からお年寄りまで女性に大人気のポアロのウェイターだ。

しかし、その裏では────
警察庁警備局警備企画課内きっての切れ者と評される公安警察官だった。

少年が呼吸を整えながら安室と目を合わせると、視線だけで窓際の奥の座席を指し示す。

「お待ちかねですよ」

そう言って、安室がニコッと白い歯を見せる。

まるで今日の目的まですべてを見透かしたような彼の微笑みに、
思わず少年は顔を引き攣らせていた。

慌てて店内に飛び込んできた少年は言わずと知れた──
江戸川コナン、ただいま小学三年生。

江戸川コナンになってからはや二年、黒の組織が崩壊してもう一年半。
見た目は子供、頭脳は大人、この姿で過ごす日々にもすっかり慣れてしまった。

「安室さん、僕、コーヒーね！」

子供らしい愛嬌のある声で彼にオーダーを頼むと、
安室に教えられた座席へとコナンは急いだ。