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小説

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肉体からの不如意


 九 肉体からの不如意

 ものの見方、すなわち外界にあるものの在りようを知るには、肉体を通じた内省を経なければならない。思念のみでは決して到達できない世界なのだ。観念は思念のみで成り立つものではない。思想には肉体の存在が必要なのだ。
 そんな観方が私に芽生えたのは、実にきみのお陰だった。肉体なくしての思想はない。空疎な議論に肉体はない。別にヨガの思想に傾倒し過ぎたのではないが、私が「わたし」として存立しえたのは、そこに肉体があったからであり、思念としての欲望があったからではない。
 欲望や渇望は、実に肉体から生じる。理想や希望も、観念や思念からではなく、身体の在りようから生じる。つまりは、生理的な衝動から、ひとは己の思想を語ることができるのだ。
 そう気づいて以来、私はひとびとの語る世界の正邪を「肉体」というリトマス試験紙を通してから判断するようにした。

更新日:2017-04-08 13:12:41