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小説

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陽だまりの猫


 六 陽だまりの猫

 それにしてもきみは、どうしてあんなに従順だったのだろう。
 私自身はガキ大将というのではなかったし、きみもまた、ひとにものを強要するタイプではなかった。どちらかといえば、ぶっきらぼうで、あまり口を利かないタイプだった。
 いつだったか、きみがいまの奥さんと一緒になるという話が出たとき、きみのお母さんは、普段、二人は一体なにを話しているんだろうねぇ、あんなに無口な娘さんをもらって退屈しやしないんだろうかねぇ、などと案じていたくらいだったのだ。
 寡黙なきみと奥さんが日常、どんな会話を交わしていたのかは知らない。だが、その言葉を聞いて私には判った気がした。私自身がそうであったように、なにを話すでもなく、ただ二人がそこにいるというだけで、陽だまりの猫のような穏やかさと温もりに満たされていたのだ。

更新日:2017-04-08 13:09:23