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小説

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きみは死んだのだ

 一 きみは死んだのだ

 長らく会っていないとはいえ、年賀状だけは欠かさなかったきみの死を、十日ほど経ってから送られてきた寒中見舞いの文面が教えてくれた。奥さんによれば、クリスマスイブの朝、きみはすでに布団の中で冷たくなっていたという。
 ひとと接するのが大の苦手で寂しがり屋。そのくせ、わがままな行動を他人に強いる甘えん坊タイプの私を、心優しいきみはいつも「リュウちゃん」と呼んで親しんでくれていた。
 きみの死を知って以来、私は、自分に対してなされたきみの優しさが思い出されるたび、自分の至らなさを悔やんだ。寛容なきみへの恩返しや弁明ができなかったことへの後悔ではなく、一度として私の申し出を拒んだことのないきみの寛容な心に較べ、私という存在がいかに小さかったかに気づかされることが日増しに疎ましくなってきたからだ。
 なにかに挑んだとき、なにかに苦しんだとき、なにかをしようと誘ったとき、きみはいつも私を受け入れ、私の望むような道を開示してくれた。それも押しつけがましくなく、控えめな力で、ほんのひと押し、ちょいと突いてくれるのだった。

更新日:2017-04-08 13:01:15