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魔除け

「わ。こんなのあるんだ?」
「いいでしょ?魔除けだよっ!」

まおの鞄にぷらぷらとぶら下って揺れているのは、なんと、俺。
いやいや。
いくら俺がまおのことを監視しておきたいからっと言って、生霊でぶら下っているわけではない。
でも、二度見してしまうぐらいリアルな・・・写真をそのまま型にぬいた俺演じるディボルトのキーホルダーだ。

「おまっ、魔除けとは失礼だな。」

いつも一緒にいたかったの♡
ぐらいの優しい嘘がつけなくてどーする。

「だって、あっちだと指輪効果ないんだもん。
既婚者でもオトコ遊びは別物だろ?とかなんとか。
好きになったらワイフなんて関係ないだろ?とか。
いちいち断るのが面倒くさくてさあ。」

・・・何っ!?
そんなにニューヨークではオトコから言い寄られまくっているのか。
無理もない。
オリエンタルはきめの細かい肌に、キラキラと輝く瞳。しなやかな体躯。
おまけに大和なでしこ、家事は完ぺきでお洒落ときたもんだ。

日本では万が一くらっときたとしても、モラルが邪魔をしてそうそう実行に移すことはなかったのだろう。
親しい間柄の人間であれば、「俺=恋人」という存在も認識されていたであろうし。

「このキーホルダーがあれば、恋人です、って楽に紹介できるだろ?
スマホの画像とか見せるのは、個人情報的に危険だしさあ。」

キーホルダーを弄びながら、屈託なく笑う。

「そうか。そうか。そういう理由だったのか!だったら歓迎だよ。」

うんうん、と何度もうなづく。
浮気をするどころか、言い寄られても自分からシャットダウンしているとは偉いじゃないか。
やっぱりできた恋人だよなあ。まおは。

単身異国の地に乗り込む、と聞いたときは真剣に貞操帯でもつけてやろうか。
と思ったぐらいだが、必要なかったみたいだ。

魔除け扱いされるのは、複雑だったが、まおに言い寄る男どもは魔物以外の何物でもない。
そう考えるとまおのネーミングセンスさえも、素晴らしいものに思えてくる。


でもなあ。
ディボルトな俺を見せられたら、相手、びびんないか?
日本文化を間違って理解されそうな気がする・・・。


「大丈夫だよ。俳優です。って説明してるから。
そしたらたいがいそっから話弾むの!大ちゃんのことで!!」

恋人自慢ができるから嬉しいんだあ。と頬を緩ませるまお。


俺のあずかり知らないところで企画されたキーホルダーだけど。
お守りのように守ってくれていたんだな。キーホルダーな俺。



更新日:2017-02-08 21:05:31

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それでも、大まおが一番!その2(2017)