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よばい。

「ごめんね~。いつも押しかけちゃって。大輔がどーしても、って言うものだから。」
「いいよ。うちも京ちゃんをお風呂に入れてもらっちゃって、助かってるもの。」

夕食後の和やかな会話の弾む浜尾家。
ママ友同士でのコーヒーブレイクは何よりもの贅沢。

「はあ。やっぱりいいよねえ。」
「うんうん。たまには、大輔にお守りしてもらっちゃお。」

風呂場から微かに聞こえてくる楽しそうな声をBGMに大人の時間を楽しむ。

・・・と、言っても束の間の休息。


「ままあ!大ちゃん!!よばいっ!!」

・・・っ!?

きゃっきゃはしゃぎながら、全裸で風呂から走ってくるのは、3歳になった京介だ。
3歳児が発するにはあまりにもふさわしくない単語にママ達は固まる。

「よばいっ!!よばいっ!!」

そんな言葉を教えたことないわよ。と視線を泳がすまおママ。
まさかうちの子がよけいな入れ知恵を、とおろおろする大ちゃんママ。

いくら大ちゃんが女の子にモテモテだからと言って、12歳の中学一年生。
夜這いをしかけたりするほどはませたりしてませんので、ご安心を。

ひとまず、ここは何が京ちゃんに聞いてみることにしましょう。

「よばい。ってなあに?」
「おけけ。もじゃもじゃっ!」

つるっつるの自分のおちんXXを指さして、きゃっきゃはしゃぐ京介。

「ま。」
「・・・あら。」

そういうことですね。
夜這いはかけずとも、お年頃になってきました。
顔を見合わせる浜尾家と渡辺家のママ達。

バツの悪そうに視線を泳がせる大ちゃん。

大人たちに知られたくない秘密を、無邪気な天使に暴露されてしまいました。
怒りたくても、相手は大好きなかわいい京たん。
ここは、恥ずかしさにじっと耐えるしかありません。

「ほらっ!きょうたんっ!まだ体ふきふきしてないだろっ!」
「大ちゃんよばい~~。」

歌うようにフレーズをつけながら、くるくると踊る京介。
この頃からダンスは好きだったのかもしれません。

「・・・ところで、京ちゃん。もしかして、よばいじゃなくて、やばい。って言いたいの?」
「んー・・・。やばい?」

やばい。やばい。と、暗記でもするように繰りかえします。
響きは健康的になったものの、やばい内容が内容だけに、いつまでも大ちゃんは恥ずかしいままです。

「ほらっ。もういいだろ。きょうたん。寝るぞっ!!」

ぱじゃまを着て、ちんまりと床に座った京介の手を強引に引いてお布団へと向かいます。

「大輔っ。夜這いしちゃだめよ?」
「大ちゃんなら、しっかり責任とってくれそうだからいいわよ~。安心して任せられるわあ。」
「信用ならないわよ。あの子も。実は甘ちゃんなんだから。」

面白がる大人の会話を背中に、逃げる大ちゃんなのでした。


更新日:2017-02-04 17:37:55

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それでも、大まおが一番!その2(2017)